教育の本質が問われる時代
魅力を競い、進化する大学へ
各大学は今、受験生から選ばれる大学、社会に貢献できる高等教育機関を目指して、その魅力を競っている。
学部・学科の新増設は、そうした取り組みの表れの一つと見ることができるだろう。
大手予備校で大学情報や教務の仕事に携わってきた経験から、今の動向を「まじめに教育の本質に取り組む大学が評価される時代が来た」と見ている高等教育総合研究所・代表取締役の亀井信明氏に、改革を進める大学の動向や、受験生・保護者が見定めるべき魅力について話を伺った。
減少する大学入学者数
医療・保育系新設が加速
――今、大学が置かれている状況をどのように見ていますか。
亀井 日本社会の少子高齢化に伴って、大学進学者は大きく減っています。大学入学年齢に達する18歳人口は、ピークである1990年代初頭の200万人強から、約20年で60%程度まで減少しましたが、しばらくは120万人前後で横ばいに推移します。ところが、2019年ごろから再び減少に転じ、2024年度には106万人となり、約13万人減少する見込みです。四年制大学進学率は約50%ですから、約60万人の大学進学者の10%、約6万人がいなくなる計算です。ところが、30数万人が入学する国公立大学や有名私立大型大学は定員割れを起こすことはまずありません。つまり、残り20数万人が入学する中小規模の大学を中心に、入学者減少の影響が集中して表われることになるわけで、こうした大学には特に大変な事態と言えるでしょう。
――そんな厳しい環境の中で、大学はどんな取り組みをしていますか。
亀井 すでに経営体力のある大型大学は大胆な手を打っています。一方、医療系に縁のなかった文系女子大を中心に近年、医療系をはじめとした学部の新設が目立っています。背景には、正規雇用が限られる、厳しい就職状況があります。受験生、特にその保護者にとっては、就職が安定していることが大学選択の重要な基準です。
大学側も、就職は大学の評価ポイントと理解しています。また、文部科学省も最近は学部の設置認可申請に当たって、第三者機関によるデータに裏付けられた募集や就職の見通しの説明を求めるようになっています。そのため、新増設される学部は、高齢化に伴って今後も高いニーズが予想される看護、理学療法、管理栄養士などの医療・保健系、待機児童ゼロ目標で不足する保育士など、入口・出口を見通せる資格系分野に集中しているのです。