飛躍するASEAN 強まる友好関係
ASEANに広がる「工業化の第二波」
「ASEAN(東南アジア諸国連合)は『工業化の第二波』に入っており、日本はその波に乗っている」と、駐日インドネシア大使のムハンマド・ルトゥフィ氏は語る。
第一波は1980年代前半から、アジア通貨危機がASEAN諸国を襲った90年代後半までであった。当時の日本企業の投資は、海外に製品を輸出するための競争力や安価な労働力をASEANに求めるものだった。そして11年からの第二波では、新しい市場をASEANに求め投資しているという。
「ASEANは市場を持っており、技術を必要としています。逆に日本は技術を持っており、市場を必要としているのです」(同大使)。
たとえばインドネシアにおける日本の直接投資はここ3年で急速に成長している。ルトゥフィ大使が10年に就任した当時は年間7.5億ドルだったが、就任後の1年で15億ドルに、2年目では25億ドルになり、今後も成長が続くと思われる。
インドネシアに積極投資している日本企業は主に、自動車産業、鉄鋼業界や化学業界である。インドネシアで走っている車の実に95%が日本製で、ほぼ独占状態だ。残りの5%も韓国やヨーロッパ、その他地域のもので、インドネシア製はない。
日本の自動車産業による直接投資は今後ますます増える傾向にあり、トヨタ、スズキ、ダイハツがそれぞれ14年までに投資を倍増させる予定だという。自動車産業の投資は、部品メーカーなど裾野産業の投資をもたらすので特に歓迎される。さらに今後エレクトロニクス分野などの進出も進めば、EMS事業への投資など、よりいっそう裾野が広がりそうだ。
新たな市場を探しているすべての企業を歓迎
どのような産業を誘致したいか、という質問にルトゥフィ大使は、「新たな市場を探しているすべての企業だ」と答えた。
たとえば、おむつメーカーとして知られるユニ・チャームは、4億ドルもの費用を投入して進出した。インドネシアの人口は世界第4位、その約半数が30歳未満であり、多くをP&G社製パンパースの輸入に頼っていた同国は、おむつの潜在需要がかなり高いのだ。
日本からはどのような業種を誘致したいかという問いには、天然資源加工業などを含むいわゆる“川上産業(The Upstream Industry)”答えた。たとえば日本は製油所が供給過剰ぎみなので、石油精製業界は日本ではなくインドネシアに投資するべきだという。銅、ボーキサイト、鉄などの天然資源も豊富で、日本の技術力も生かせるだろう。
ASEANと日本は、互いに繁栄と友好をもたらす有意義な関係にある。この友好関係は、この地域の平和と安定のために大変重要なのだ。
特にインドネシアは日本を親友だと考えている。最近オーストラリアでインドネシア人を対象に行われた調査では「インドネシアの親友はどの国だと思いますか?」との設問に、60%の人が「日本」と答えたという。また別の設問では80%の人が、最高のビジネスパートナー国は日本であると答えたという。
二国間の関係が友好的である理由は、インドネシアと日本が「民主主義、法の秩序、平和に物事を解決すること」の三つの基本的な価値観を共有しているからだ、と大使は親友との友情に信頼を寄せている。