
時短英語を可能にする二つのエレメント
英会話学校に数年通ってみたが結局、期待したほど英語力は身に付かなかった―。そんな挫折組には、到底信じてもらえそうもないのが次の一文だ。
「たった90日で500点台だったTOEIC®のスコアが800点を超えた」
だが、それを確かに現実のものにしている英語のパーソナルトレーニングジムがある。「StudyHacker ENGLISH COMPANY(以下、ENGLISH COMPANY)」である。
2015年に第1号スタジオを四谷に開設して以来、入会希望者は増え続け、わずか3年で3000名以上もの修了生を輩出している。現在は首都圏・関西を中心に12のスタジオを展開しているが、待機者の数は常時600名を下らず、今も入会まで1~2カ月待ちだという。
ENGLISH COMPANYを運営しているのは教育系のスタートアップ企業、恵学社だ。代表取締役の岡健作氏に、90日で英語力を大幅に向上させられる理由を聞いた。
「理由は二つあります。一つは言語習得に関する先進的な学問『第二言語習得研究』の知見をベースに開発した課題発見メソッドの存在。もう一つは、受講生をマンツーマンで指導するパーソナルトレーナーの言語教育についての専門性です」
著者:田浦秀幸
協力:StudyHacker
ENGLISH COMPANY
出版:マイナビ出版
価格:918円(税込)
「第二言語習得研究」とは、人間が母語以外の言語(=第二言語)を習得するプロセスやメカニズムを解明する学問だ。1960年代に英語圏で基礎的な研究が始まったとされている。日本でも高等機関で研究が進められている。
第二言語習得研究に基づく英語学習法については、立命館大学 言語教育情報研究科の田浦秀幸教授が上梓している著書『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』(マイナビ新書)に詳しい。
本の奥付には「協力」としてENGLISH COMPANYの名も読め、研究と実践において共同作業をしていることがうかがわれる。

課題の正確な発見こそが時短の鍵
ENGLISH COMPANYの根幹を成す、第二言語習得研究の知見をベースにした課題発見メソッド。その効果、有用性を痛感しているのがパーソナルトレーナーたちだ。彼ら・彼女らの中には、大学で言語教育学を学んだ人もいれば、比較言語学や翻訳史を学んだ専門性の高い人材も少なくない。パーソナルトレーナーは採用された後、研修を通して第二言語習得研究の知見をとことん学び、トレーニングをスタートさせる。
受講生も自覚できない深層の課題を掘り起こしていく
実は、英語力を身に付けるうえで、最も重要なのはトレーニングメソッドそのものではない。シャドーイング、ディクテーション、多読、サイトトランスレーション……こういった英語力向上のためのメソッドを耳にしたことがある人も少なくないだろう。しかし、それぞれのメソッドにはターゲットとする課題がある。シャドーイングと多読とでは、解決しようとする課題が異なるのだ。好きな方法を選んでそれに取り組めばよい、というものではない。
そこで重要になるのが、学習者のつまずきを探り出し、つまずきの原因を発見することだ。ほとんどの学習者は自分が苦手としていることの本質的な理由がわからない。リスニングが苦手なことは自覚していても、なぜリスニングが苦手なのか、その理由を正しく把握できないのだ。
そこで、なぜ苦手なのか、何が課題なのか、という課題発見で大きな役割を担っているのがパーソナルトレーナーである。課題を正確に発見できれば、その課題に効果のあるメソッドを用いることで時短学習は達成できる。では、パーソナルトレーナーは受講生の課題をどう発見しているのか? 具体的に二つのケースを基に、課題発見のプロセスをパーソナルトレーナーの北森舞さんに語ってもらった。
課題発見のプロセスがわかる二つのケース
まずは男性Aさんのケースだ。
「Aさんはデザイン系の会社にお勤めの40代の男性でした。外国人の同僚が多いとのことで、その方たちとしっかりコミュニケーションを取り、これまで以上に仕事を円滑に進めたいとの希望をお持ちでした」
過去にも英会話学校に通ったり、英語学習のメソッドを調べたりして英語力の向上を図ってきたAさん。しかしどれもうまくいかなかったという。最初に受けたTOEIC®の模試でも400点ほどの結果だった。
「まずオリジナルの課題発見メソッドである速読リーディングによって、課題のアセスメントを行いました。その結果、Aさんの場合、音声知覚に問題があることがわかりました。音声変化が生じたところを聞き取れていなかったので、まずは音声変化のルールを覚えていただくことから始めました」
ネイティブが英語を話す時、文の中で一部の音が脱落したり、前後の音が連結して発音されたりする。こうした音声変化にはルールがあるが、大半の学習者はそのルールを知らない。
ディクテーションという、英語の音源をそのまま書き取るトレーニングで、聞けていない箇所を明確にした後、最初から最後まで英語の音源と完全にそろえて読むオーバーラッピングが行われた。
その後も、英文を日本語に訳しながら読んでしまう返り読みと呼ばれる現象を矯正するチャンクリーディングなどのトレーニングで英文の処理スピードを上げた。90日後、Aさんは外国人の同僚が何を話しているのか、スッと理解できるようになったという。それがAさんの勘違いでないことは、数字にも表れている。TOEIC®の公式スコアでおよそ400点アップの805点を獲得したのである。
次は30代の女性Bさんのケースである。
「Bさんは外資系企業で営業職に就く30代の女性でした。社内文書はすべて英文なのですが、現状ではなかなか理解できないとのことでした。また、上司が日本人から外国人に代わり、上司とも英語でコミュニケーションを取りたいとの希望をお持ちでした」
Bさんは中学生の頃から英語が大嫌いだった。当然、苦手意識も強く、最初に受けたTOEIC®の模試のスコアも400点に届かなかった。
「初め、Bさんは英文をゆっくり読んでも意味が理解できませんでした。解説をしても『不定詞って何でしたっけ?』という反応でした。さらに知っている文法に関しても、内容理解に時間がかかっていたので、抜けている知識を補うことと知識の運用速度を上げることを優先的に解決すべき課題として設定しました」
抜けている文法の知識とその運用能力は、認知文法とパターンプラクティスで補うことにした。認知文法とはごく簡単に言うと、人間のものの見方がどのように言語表現に表れるかを説明するもので、この考え方を文法指導に取り入れることにより、丸暗記する内容が減り、ネイティブに近い感覚で文法を理解することができる。さらに、パターンプラクティスでは、負荷を高めた繰り返し練習によって、理解の処理がスムーズに行えるようにした。
「学校で習う英文法は苦手とおっしゃっていたBさんでしたが、認知文法の考え方は頭にスッと入ったようです。文法の知識が入っていけばいくほど、理解の速度も上がっていきました」
このほか、音声変化の課題をクリアするなどし、90日後、そこには英文を読むスピードが驚くほど速くなっているBさんがいた。
それまでなんとなく避けていた外国人の上司とも、積極的にコミュニケーションをとれるようになり、最終的なTOEIC®のスコアは、およそ450点アップの845点をたたき出していた。AさんもBさんも、90日間という限られた時間で、当初の目標を見事に達成した。90日という期間もさることながら、確実に目標を達成することにも、価値がある。
英語が求められる環境は、以前よりも大きく増えている。自分に合った英語学習を選択する際、限られた重要な資源である時間を、どう使うかについて、いま一度考えてみてはどうだろうか。
