生産性と利益率の向上はなぜ連動しないのか 営業部門がコミットする「営業課題解決」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
働き方改革を進めるうえで、残業時間の削減と並んで重要課題になっている生産性向上について検討するビジネスカンファレンス「生産性の向上と利益率の向上がなぜ連動しないのか?」が3月、東京・港区で開かれた。参加した約250人が、生産性を改善する仕組みや、強い組織のあり方に関する講演に聞き入った。

主催:東洋経済新報社 協賛:ソフトブレーン

基調講演
生産性向上と売上の向上を両立させる、良品計画流「仕組み」づくり

良品計画前会長
松井オフィス 代表取締役社長
松井 忠三

経営不振に陥っていた「無印良品」の良品計画社長に2001年に就任してV字回復させた実績を持つ松井忠三氏は「リストラだけでは会社は立ち直れない。負けた構造から、勝つ構造を作らなければならない」と、自身が取り組んだ企業変革について語った。

松井氏は「無印が負けた原因の本質には企業風土があった」と分析。文化や感性に頼って科学的分析に欠けるオペレーション、実行力を伴わない企画中心の体質、店ごとにばらつきが大きくなる経験主義といった課題に挑んだ。失敗も多かった出店判断は点数制にして基準を明確化することなどで成功率アップ。夜間配送の実施や返品作業の削減などオペレーション効率化で店舗人件費を大幅に減らした。

また、世界的に有名なデザイナーと提携して、従来の商品開発手法も変えた。メーカーの管理手法にヒントを得て、本部業務基準書を作成。店舗業務のマニュアル「MUJI GRAM」も整備して業務を標準化した。マニュアルは最終形ではなく、つねに進化するように、社員の改善提案を受けながら改定を続けている。

「遅くまで残って仕事をする人が優秀なわけではない」とする定時退勤や、「ゴミが落ちているような会社に良い会社はない」としたクリアデスクルールなどのワークスタイル変革も推進。

業務の締め切り日をシステムやボードで管理して、業務実行の見える化をして「決めたことはきちんとやる」企業風土づくりも進めた。松井氏は「仕組みを整え、日常業務の中で社風を変えれば、社員の行動は変わり、生産性、売り上げの向上につなげられる。そのヒントは異業種にあると思う」と訴えた。

課題解決講演
営業生産性を最大化できるCRM/SFAの活用法
~残業3割減・受注3.6倍を実現~

ソフトブレーン
取締役 本社営業本部長 兼
人財開発室長
長田 順三

ソフトブレーンの長田順三氏は「労働時間削減ばかりが注目されている働き方改革で、売り上げも向上させるには営業の成果を最大化しなければならない」と述べ、三つの方策を挙げた。

一つ目は「売れる営業ほど、コア以外の業務が増える」と、コアの顧客接点業務に集中する必要性を強調。商談内容等の情報を社内共有する仕組みを作り、アポイント獲得や見積もり作成、名刺入力など、営業担当でなくてもできる業務を引きはがせば、生産性を上げられるとした。

二つ目は業務効率化。営業現場のPDCAのうち、営業担当が計画を立てて訪問するPとDの段階で「行くべき顧客より行きやすい顧客を優先する」傾向を指摘。表計算ソフト等による報告では「上司が具体的内容を把握して部下に指導することが難しくなり、CとAもうまくいかない」として、移動中にスマートフォンから必要な情報を手軽に入力、閲覧できるシステムによる情報武装化を主張した。

三つ目は、投資してマーケティングが獲得した見込み客リストを、営業が活用できていないボトルネックに言及。「マーケティングツールと顧客管理(営業支援)システムをつなぎ、営業の見込み客フォロー状況を見える化する」ことを提案し、忙しい営業にすべてをフォローさせるのではなく、マーケティングオートメーションツールやインサイドセールスの活用を訴えた。

集客から商談・案件管理、分析まで一元化する同社のeセールスマネージャーは、予実ギャップ、大型案件の進捗、営業担当の行動マネジメントを容易にするシステムで「皆様の経験、ノウハウと仕組みをつなぎ、生産性向上に貢献したい」と話した。

次ページ健康総合企業タニタが取り組む「営業改革」の本質