食品サプライチェーン 革新の方向性 -進化するコールドチェーン-
事例講演I
「小口混載定温輸送サービスを中心としたランテックの戦略」
山中一裕氏/ランテック代表取締役社長
食品低温物流事業に注力するランテックの山中一裕氏は、現状について、国内貨物輸送量が減少しているのに対して、冷凍冷蔵食品の物流額が増加しているというデータを提示。高齢化や女性の社会進出に加えて、家庭用冷蔵庫の大型化もあり、総菜や冷凍食品などの中食市場が拡大していることを示した。さらに「国内の冷凍食品の消費量は、まだ米国の3分の1、英国の半分以下で、今後も増加が見込まれる」と予想。同社は、BtoBの小口混載輸送「フレッシュ便」と貸切便輸送のほか、顧客からの在庫保管ニーズも満たせるフレッシュ便基地として、物流センターの整備を推進。トラック、トレーラーのほか、鉄道での冷凍冷蔵コンテナ輸送も展開する。
また、ハンディターミナルの検品による商品追跡システムや、温度監視システムを備えたコンテナなどで信頼性の高い輸送を実現。特に、鉄道コンテナへのモーダルシフトは「ドライバー不足への対応と、環境負荷の低い輸送手段にすることが狙い」と積極的に推進。物流センターも、今年、広島、大阪などに続々と新設。災害時のBCP(事業継続計画)や輸送品質向上のための研修等も充実させ「顧客の支持を得て、冷凍冷蔵食品物流のオンリーワンを目指す」と語った。
事例講演II
「冷蔵倉庫におけるマテハン技術」
権藤卓也氏/ダイフク執行役員FA&DA事業部エンジニアリング本部長
物流センターのマテハン(マテリアルハンドリング)システムを手がけるダイフクの権藤卓也氏は、冷凍冷蔵の自動倉庫について説明。「消費者の食の安全に対する意識の高まりを背景に温度管理がより厳しく求められるようになっている」と指摘。自動倉庫では、モーターなどの機器単位では低温下でも作動する性能を備えているが「結露や結氷対策なども検討し、設備を安定稼働させることで適正な温度管理が可能」と話した。
自動倉庫は、高層ラックを使うことで建物上部のスペースを有効に使えるが、地震が起きた際の荷崩れや、低温下では人手による確認作業が難しいという課題がある。ダイフクでは、高コストの免震装置を導入する以外に、ラックに制振用部材を追加するなどの対応を行っている。またクレーン上部にカメラを取り付けて遠隔監視するシステムを提供していることも紹介した。
自動倉庫の導入には、こうした課題はあるものの、取扱単位が小口化する流れや、人手不足による生産性向上の観点からニーズは高いとの見方を示し、自動化しやすい梱包や積み付けなどを生産側も含めて検討し全体最適化を図る必要性を強調。「最終消費者への高品質な配送と、物流現場の労働環境の改善を両立するためにもマテハン設備は有効だ」と語った。
物流施設のご紹介
「野村不動産が考える温度帯食品物流施設の取り組みについて」
加藤俊輔氏/野村不動産都市開発事業本部物流施設事業部
顧客ニーズに合わせた大規模高機能型物流施設「ランドポート」ブランドを首都圏、関西、中部に24棟、展開する野村不動産の加藤俊輔氏は、同社の冷凍・冷蔵の温度帯物流施設の取り組みについて説明した。まず、冷媒のフロンガス等に対する環境関連の規制や、IT・通販事業の発展、少子高齢化・女性の社会進出といった外部環境の変化を指摘。それらに伴う食品流通ニーズの変化に対応した物流施設のあり方として「川上の保管型や産地型と、川下の流通型の中間的機能設備を持つ冷蔵倉庫の提供が必要」と述べた。
立地については、施設内の人手の雇用確保、消費地へのアクセス、トラックから鉄道へのモーダルシフト、輸入貨物への対応を検討する必要性を強調。適正な在庫保管ができる施設レイアウト、荷さばき流通加工エリアの配置、高回転多頻度配送が可能なトラックバース、保管ラックのレイアウト効率化を考慮した区画形成や省人化を図る自動ラック導入――などの機能を充実させ、整備した敷地約1万平方mの大型物流施設「ランドポート東雲」(東京・江東区)を紹介。「食品物流は細かなところまで研究する必要がある。環境変化、顧客ニーズに対応した物流プラットフォームを提供していきたい」と語った。