実証から実践に向かうFinTech最前線 金融テクノロジーの最先端がわかる

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実装事例
金融機関を取り巻く環境変化とMUFGのデジタル・トランスフォーメーション戦略

三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタル企画部副部長
扇 裕毅

スマートフォンの世帯普及率が7割を超え、高齢者もデジタル技術を利用するのが当たり前になってきている。こうしたなか、インターネットバンキングの普及等もあり店頭来店客は減少しているため、非対面チャネルの利便性を図ると同時に有人チャネルの高度化・効率化も図ってきた。扇裕毅氏は、金融業界を取り巻く環境変化についてこう概観したうえで、MUFGのデジタル・トランスフォーメーション戦略について解説。

「デジタルを活用した事業変革を柱の一つにMUFG再創造イニシアティブを推進し、ヘルプデスク、帳票処理、検索などの業務はAI・ロボティクス等への代替を検討していくが、それは顧客と向き合う時間を増やすことも目的」と、ビジネス、カルチャー、プロセス、社会の改革にチャレンジしているとした。

また、業務プロセスの効率化の加速、デジタル通貨の試行、新デバイスによる新しい金融サービスの提供、金融領域以外も含めた国内外でのオープンイノベーションなどに取り組んでいることも紹介し「いちばん難しいのはカルチャー改革であり、研修やセミナー、メンタリングなどにより、失敗を恐れないマインドセットを目指し、こうしたさまざまな改革の推進には他社と連携することも有効」と語った。

実装事例
千葉銀行のデジタルバンキング戦略におけるフィンテックへの取り組みについて

千葉銀行 参与 兼 T&Iイノベーションセンター 代表取締役会長
森本 昌雄

千葉銀行は中期経営計画で、2020年をターゲットにデジタルバンキングにシフトしていくことを目指している。そのために、サービス、業務、行員のデジタル化を柱とするデジタルバンキング戦略を策定。フィンテック事業の推進も掲げており、16年に地銀5行とともにフィンテックについての調査研究を行うT&Iイノベーションセンターを設立した。

森本昌雄氏はこうした経緯を説明し、千葉銀行ではベンチャーと協業し、ビッグデータの分析やAIを投信販売に関するマーケティングの高度化に活用したり、インターネット上で投資のアドバイスを提供するロボアドバイザーを導入するなどして、成果を挙げているとした。

また、T&Iイノベーションセンターでは、TSUBASAアライアンス六行共同でのAI活用の実証実験や地方創生を目指すフィンテックベンチャー発掘のためのビジネスコンテスト開催などにも取り組み、現在は、APIにより銀行サービスをアプリで提供する共通基盤の構築を通じて、金融分野に限らないさまざまな業者間で価値ある情報連携が可能な生態系の形成を目指していると説明した。

そして「システム自由度の高いAPI共通基盤を活用し、銀行法改正に伴う努力義務に対応するとともに、外部企業との接続によるサービスの多様化や行内開発のスピードアップ、コスト削減を実現したい」と語った。

最新デモンストレーションが行われた展示会場も多くの来場者でにぎわった
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