
基調講演
銀行業の再考:世界最高峰のデジタルバンクの変革の軌道
テクノロジー業務本部長
David Gledhill氏
1968年にシンガポール政府により設立されたDBS銀行は、シンガポールと香港を中心に銀行業務を行い、収益などの業績は決して悪くはなかった。しかし、市場規模は限定的で、将来的な成長性には期待ができなかった。一方で金融業界には異業種からグローバルジャイアントが参入、支店を増やすこれまでの戦略でビジネスを拡張するのは難しい局面にあった。
グレッドヒル氏は、こうした背景によって2009年から改革に着手したと説明した。フィンテックなどの活用によって会社全体を芯までデジタル化し、スピーディに動けるように体質を変え、顧客目線で考え業務プロセスの抜本的見直しに着手。
プロジェクト型からプラットフォーム型への移行、アジャイルなチームをつくること、業務の自動化などに注力してきた。「特にエコシステムの中ではAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を重視し、自らテクノロジーをつくり、オペレーションしなければならない」と語った。
その結果、インドやインドネシアにデジタルバンクとして進出することに成功し、業績はアップしコストは低減。16年には「ワールド・ベスト・デジタルバンク賞」を受賞したと述べた。
IBM講演
金融業界におけるデジタル・リインベンションとは
蓑輪 圭樹氏
金融のデジタル化が急速に進む一方で、デジタル化されていないフィジカルの世界にいる顧客も少なくない。よってフィジカルとデジタルとの連動の価値を探ることが重要なテーマになる。デジタルとフィジカルでは勝利の方程式が異なる。
では、どのようにしてフィジカルとデジタルの成功を融合させていくか。蓑輪氏は「顧客主導のカスタマージャーニーを設計するなど顧客接点を変革することに加え、コア業務は確実に遂行しながら迅速にビジネスの変化に対応して変革していくことが必要」と指摘した。
そのうえでデジタル時代の新しい金融サービスのイメージとして、チャネルの高度化、たとえば「残高照会」と発語するだけでサービスが提供されるカンバセーショナルバンキングやAIなどの活用により顧客が求める前に先回りしてサービスを提案する新しい顧客体験、やり取りをすべてデータ化する法人取引のデジタル化、オープンAPIを活用したエコシステム・プラットフォームによる新たな価値創造などを提示。
APIなどのテクノロジーによって時代の変化に立ち向かう金融機関は今後、守勢から攻勢に転じていくと指摘し「それをIBMはテクノロジーでサポートしていく」と述べた。
実装事例
金融機関を取り巻く環境変化とMUFGのデジタル・トランスフォーメーション戦略
扇 裕毅氏
スマートフォンの世帯普及率が7割を超え、高齢者もデジタル技術を利用するのが当たり前になってきている。こうしたなか、インターネットバンキングの普及等もあり店頭来店客は減少しているため、非対面チャネルの利便性を図ると同時に有人チャネルの高度化・効率化も図ってきた。扇裕毅氏は、金融業界を取り巻く環境変化についてこう概観したうえで、MUFGのデジタル・トランスフォーメーション戦略について解説。
「デジタルを活用した事業変革を柱の一つにMUFG再創造イニシアティブを推進し、ヘルプデスク、帳票処理、検索などの業務はAI・ロボティクス等への代替を検討していくが、それは顧客と向き合う時間を増やすことも目的」と、ビジネス、カルチャー、プロセス、社会の改革にチャレンジしているとした。
また、業務プロセスの効率化の加速、デジタル通貨の試行、新デバイスによる新しい金融サービスの提供、金融領域以外も含めた国内外でのオープンイノベーションなどに取り組んでいることも紹介し「いちばん難しいのはカルチャー改革であり、研修やセミナー、メンタリングなどにより、失敗を恐れないマインドセットを目指し、こうしたさまざまな改革の推進には他社と連携することも有効」と語った。
実装事例
千葉銀行のデジタルバンキング戦略におけるフィンテックへの取り組みについて
森本 昌雄氏
千葉銀行は中期経営計画で、2020年をターゲットにデジタルバンキングにシフトしていくことを目指している。そのために、サービス、業務、行員のデジタル化を柱とするデジタルバンキング戦略を策定。フィンテック事業の推進も掲げており、16年に地銀5行とともにフィンテックについての調査研究を行うT&Iイノベーションセンターを設立した。
森本昌雄氏はこうした経緯を説明し、千葉銀行ではベンチャーと協業し、ビッグデータの分析やAIを投信販売に関するマーケティングの高度化に活用したり、インターネット上で投資のアドバイスを提供するロボアドバイザーを導入するなどして、成果を挙げているとした。
また、T&Iイノベーションセンターでは、TSUBASAアライアンス六行共同でのAI活用の実証実験や地方創生を目指すフィンテックベンチャー発掘のためのビジネスコンテスト開催などにも取り組み、現在は、APIにより銀行サービスをアプリで提供する共通基盤の構築を通じて、金融分野に限らないさまざまな業者間で価値ある情報連携が可能な生態系の形成を目指していると説明した。
そして「システム自由度の高いAPI共通基盤を活用し、銀行法改正に伴う努力義務に対応するとともに、外部企業との接続によるサービスの多様化や行内開発のスピードアップ、コスト削減を実現したい」と語った。