実証から実践に向かうFinTech最前線

金融テクノロジーの最先端がわかる

銀行と非金融業の協業を促す改正銀行法が施行される2018年は、日本のFinTechにとって大きな節目になることが予想されている。AIやオープンAPIなどのデジタル技術の進化は金融業界をどう変えていくのか。「金融テクノロジーの最先端のすべてがわかる」と銘打たれたイベントが3月、東京都中央区で行われた。
――金融業界でデジタル化へのシフトが進んでいる。すでに人工知能を使ったサービスも実用化され、ブロックチェーンの実証実験なども行われている。そうした実情を踏まえ、日本アイ・ビー・エムの蓑輪圭樹氏は「19年、20年に金融業界でデジタル化がどうシフトしていくか議論していきたい」とあいさつした。
主催:日本アイ・ビー・エム 協力:東洋経済新報社

基調講演
銀行業の再考:世界最高峰のデジタルバンクの変革の軌道

DBS銀行 最高情報責任者 兼
テクノロジー業務本部長
David Gledhill

1968年にシンガポール政府により設立されたDBS銀行は、シンガポールと香港を中心に銀行業務を行い、収益などの業績は決して悪くはなかった。しかし、市場規模は限定的で、将来的な成長性には期待ができなかった。一方で金融業界には異業種からグローバルジャイアントが参入、支店を増やすこれまでの戦略でビジネスを拡張するのは難しい局面にあった。

グレッドヒル氏は、こうした背景によって2009年から改革に着手したと説明した。フィンテックなどの活用によって会社全体を芯までデジタル化し、スピーディに動けるように体質を変え、顧客目線で考え業務プロセスの抜本的見直しに着手。

プロジェクト型からプラットフォーム型への移行、アジャイルなチームをつくること、業務の自動化などに注力してきた。「特にエコシステムの中ではAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を重視し、自らテクノロジーをつくり、オペレーションしなければならない」と語った。

その結果、インドやインドネシアにデジタルバンクとして進出することに成功し、業績はアップしコストは低減。16年には「ワールド・ベスト・デジタルバンク賞」を受賞したと述べた。

IBM講演
金融業界におけるデジタル・リインベンションとは

日本アイ・ビー・エム 常務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 サービス事業戦略担当
蓑輪 圭樹

金融のデジタル化が急速に進む一方で、デジタル化されていないフィジカルの世界にいる顧客も少なくない。よってフィジカルとデジタルとの連動の価値を探ることが重要なテーマになる。デジタルとフィジカルでは勝利の方程式が異なる。

では、どのようにしてフィジカルとデジタルの成功を融合させていくか。蓑輪氏は「顧客主導のカスタマージャーニーを設計するなど顧客接点を変革することに加え、コア業務は確実に遂行しながら迅速にビジネスの変化に対応して変革していくことが必要」と指摘した。

そのうえでデジタル時代の新しい金融サービスのイメージとして、チャネルの高度化、たとえば「残高照会」と発語するだけでサービスが提供されるカンバセーショナルバンキングやAIなどの活用により顧客が求める前に先回りしてサービスを提案する新しい顧客体験、やり取りをすべてデータ化する法人取引のデジタル化、オープンAPIを活用したエコシステム・プラットフォームによる新たな価値創造などを提示。

APIなどのテクノロジーによって時代の変化に立ち向かう金融機関は今後、守勢から攻勢に転じていくと指摘し「それをIBMはテクノロジーでサポートしていく」と述べた。

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