
腸の健康づくりで注目したい素材は大麦、小麦ブラン
まず、腸の健康が注目を集めるようになった経緯について、著書に『ヒットを育てる! 食品の機能性マーケティング』(日経BP社)などがあり、健康食品ビジネスコンサルタントを行うグローバルニュートリショングループ代表取締役・武田猛氏に聞いた。
「欧米の健康食品市場では、ナチュラルヘルシーとウェイトウエルネスが商品開発の2大トレンドです。前者は天然素材がもつ豊富な成分を生かすこと。後者は過度なカロリー制限ではなく、健康によい食品を毎日の食事に取り入れて体重を調整するという考え方です。この2つから派生して腸によい食品への関心が高まり、日本にも波及しました」。
腸活というと、便秘の予防を連想する人が多いかもしれないが、「腸を整えることはダイエットや、体全体の健康につながるとして重要視されています。学会では、免疫の働きやメンタルヘルスにも影響するという研究結果が報告されています」と武田氏は語る。
そうして消費者に浸透してきたのが、食物繊維を積極的に摂ろうという意識。食物繊維は現代人の食生活では不足しがちだ。厚生労働省がまとめた『日本人の食事摂取基準』(2015年版)では、1日あたりの食物繊維の望ましい摂取量は成人男性で20グラム以上、成人女性で18グラム以上。ところが『平成28年国民健康・栄養調査』によると、成人男性の平均摂取量は15.0グラム、成人女性は14.4グラムしか摂っていない。食物繊維不足を補える食材として、武田氏が注目するのは大麦と小麦ふすま(小麦ブラン)だ。食物繊維が多い野菜であるゴボウ(皮付き生)の場合、可食部分100グラムあたりに含まれる食物繊維は5.7グラム。それに対して大麦(押麦)は9.6グラムもある(「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より)。
「食物繊維は、水に溶ける“水溶性食物繊維”と、溶けにくい“不溶性食物繊維”の2つに大別されますが、大麦に含まれる食物繊維の大半が水溶性です。水溶性の繊維は腸の中にいる乳酸菌やビフィズス菌のような善玉細菌のエサになるので、有用な細菌が増え、悪玉菌の増殖を抑えます。そうした働きで、腸の環境が整えられると考えられています」と武田氏は語る。もうひとつの食物繊維である不溶性食物繊維はどうなのか。「腸内細菌のエサにはなりにくいとされていますが、ビフィズス菌や乳酸菌など有用な菌を腸まで届け、便通をよくする働きがあります」。
この不溶性食物繊維を多く含む食材が、小麦ブラン。小麦の外皮分部のことで、小麦粉の製粉の過程で取り除かれてしまう部分だが、100グラムあたりの食物繊維は約40グラムにもなるという。このように水溶性食物繊維が豊富な大麦と不溶性食物繊維が豊富な小麦。この2つを同時に摂取することで、MACs(腸内細菌のエサとなる穀物繊維)と呼ばれる穀物の相乗効果が期待されるという。
「大麦や小麦ブランは風味が独特なので、調理や加工がしづらいのが難点です。手軽に食べられるという点で着目したいのはシリアルです。コーンフレークのイメージが強いかもしれませんが、大麦など食物繊維が豊富な素材を使ったシリアルも増えています」
腸活ブームで注目されるシリアル。では、どのような商品が開発されているのか。今回は、大麦の中でも最近特に注目されている「スーパー大麦(※)」を使ったシリアルを展開している日本ケロッグを取材した。
新製品のプロモーションで手応えあり
1906年にアメリカで創業し、シリアルプラントとして世界で事業展開するケロッグ。現在、同社が力を入れる商品は『オールブラン』シリーズだ。保水性の高い不溶性食物繊維を多く含み、水分を吸収して大きく膨らむ性質がある小麦ブランを主な素材にし5アイテムを展開。その中のもうひとつが、2つのMACsである小麦ブランとスーパー大麦が摂れる2018年2月に発売した『オールブラン プレミアム®』だ。
「当社では従来から素材になる穀物の研究を重ね、商品によって小麦、オーツ麦、玄米などを使い分け、加工方法を変えてきました。そうしたなかで着目した素材がスーパー大麦です」と語るのは、執行役員でマーケティング本部長の大谷弘子氏。開発では味の追求にも注力した。健康をサポートする素材でも、おいしくなければ消費者は買ってくれない。
「スーパー大麦はかたくて独特の香りがあり、小麦ブランはパサパサしていて食べづらい素材です。この2つの素材からおいしい食品にするのは苦労がありました。開発チームは試行錯誤の連続でしたが、糖質を控えながらもほどよい甘さがあり、ざくざくとしたフレークの食感や香ばしさも楽しめる商品になりました」
新たな購入者の開拓には、食べてもらえる機会をつくるための仕掛けが必要になる。『オールブラン プレミアム®』では発売と同時に蔦屋書店・T-SITEなどのカフェとコラボし、プロモーションを展開した。この商品を使ったシリアルバーガーやパンケーキなどのメニューを提供。さらに親子で参加できる「シリアルおやつ作り」などの体験イベントを開催したところ、「お子さんの腸活に熱心な親御さんが予想以上に多くて驚きました」と、大谷氏は反響の大きさを語る。また、総合フィットネスクラブのティップネスと提携した「美腸ダイエットプログラム」も人気で、4月1日より全国55のティップネス店舗における有料化プログラムとして規模を拡大し展開する。
大谷氏は「シリアルは牛乳やヨーグルトをかけるだけではなく、ハンバーグのつなぎや揚げ物の衣にするなど、いろいろな食べ方ができます。そんな楽しみ方の情報も広く発信したい」と話す。腸活を考える人に対して高い訴求力を備えた同社商品だが、毎日食べる食事として前提となる味の追求も欠かさない。
小腹がすいたときやパンケーキなどに混ぜて調理をしてみるなど、生活のさまざまなシーンでこうしたシリアルを取り入れてみてはどうだろうか。同社ではシリアルを使ったレシピをホームページで紹介。おいしく、楽しみながら、長く腸活をしたいものだ。