航空時計100周年の歴史を支えてきた哲学 パイロットのシビアな要求に応える精緻さ
3月5日、スイスに拠点を置く腕時計ブランドのハミルトンは、2018年の新作モデルを披露した。
ハミルトンは、1892年にアメリカ・ペンシルバニア州ランカスターで創業した腕時計ブランド。高精度な時計を製造する技術力を保持していたことから、創業後すぐにアメリカの鉄道公式時計に任命され、その後も航空業界や軍隊など、時間計測にミスが許されない業界で重用されてきた。一方で、世界初の電池式腕時計「ベンチュラ」や世界初のLED式デジタル時計「パルサー」など、時計史に刻まれる名作も数多く開発。その革新性や独創性は映画界や音楽界のパイオニアたちを魅了し、アメリカの歴史とともに発展してきた。現在は時計製造の一大産業地であるスイスを拠点に、業界最大手であるスウォッチグループの傘下として独自の世界観を打ち出している。
ハミルトンを含む腕時計メーカーの多くは、毎年3月下旬から4月上旬頃にスイス・バーゼルで開催される「バーゼルワールド」にて新作を一斉に発表するのが通例だが、今回は「プレ・バーゼル」として、重要市場に位置づけている日本において新作を先行発表した形だ。本国からはCEOのシルバン・ドラ氏が来日し、今回お披露目された新作の特徴について自ら解説した。
航空時計ならではの精度と視認性
今年の主力に位置づけたのは、アビエーションの計時を始めてから100年という節目を象徴する「カーキ アビエーション」コレクションだ。人類史において近代的航空機が生まれてから間もない1918年、ワシントンD.C.-ニューヨーク間に開設されたアメリカ初の定期航空便の公式時計に、ハミルトンの腕時計が採用されたのがはじまり。以降、アメリカの航空会社や空軍へも供給し、パイロットたちが求める実用的な腕時計を追求してきた。現在でもアメリカ空軍の養成学校に腕時計を提供しており、2017年からは「空のF1」とも呼ばれる小型プロペラ機によるレース「レッドブル・エアレース ワールドチャンピオンシップ」の公式タイムキーパーに就任するなど、密接な関係を続けている。