キレイ事じゃない!「平和学」研究の実態 机上論で未来は拓けない、現実に目を凝らせ

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国、地域、民族……さまざまな対立や紛争が、今も世界中で起こっている。グローバル化が深まる一方で、こうした複雑で解決困難な課題に立ち向かう人材が求められる中、創価大学大学院がこの春「国際平和学研究科」を開設して注目を集めている。8名の教授に対して学生はたった13名という徹底した「少数精鋭」の教育。皆、国籍をはじめ多様なバックグラウンドを持つのが特徴だという。

 

――「国際平和学研究科」は、どんなコースになるのでしょうか。

小出:2014年にスタートした国際教養学部では、すベての授業が英語で行われ、社会問題に学際的にアプローチできる人材を育てるべく取り組んできました。この春1期生が卒業するのに際し、本学の特色をさらに生かして大学院に新しく「国際平和学研究科」を開設することになりました。国際平和学の研究と教育を通して、政策構想力と提言力を持つ創造的「世界市民」を養成するコースです。

小出 稔
創価大学大学院教授。米・南カリフォルニア大学にてPh.D.取得。専門は国際関係論、テーマは東アジアの国際関係や日本外交

文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」では、本学の取り組みが5段階評価中で最高の「S」評価を取得しました(2017年度の中間評価)。これは日本に700校以上ある大学の中から、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学が選ばれ、評価を与えられるもの。さっそくこれだけの高評価を得ることができ、とても誇らしく思っています。

学生13名は、なんと全員外国人!多国籍な学生が集う

――少数精鋭で多国籍な学生が集まると伺いました。

小出:初年度にも関わらず、世界中からたくさんの応募がありました。1期生は、8カ国から13名の優秀な学生が集まる予定なので、とても楽しみです。学生のほとんどは、海外からの志願者です。

エマニエル:大人数で授業を受ける学部とは異なり、大学院では学生同士の議論や、そこから巻き起こる相互作用が重要です。教授が前に立って講義を行うだけでなく、学生一人ひとりが積極的に考えて、より深く理解することが求められます。13人という人数は、全員で話し合うこともできますし、3〜4人のグループに分かれてさらに密な討論をすることもできる。深い学びに最適な人数だと考えています。

――エマニエル先生をはじめ、教授陣も世界中から優秀な方が集まるそうですね。

小出:実は、教員で日本人は私1人。ほかは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フィリピン、ブルガリア、カナダ……と、国籍も出身もバラバラです。専門分野も、私は国際関係論ですが、政治学、哲学、社会学、歴史学、紛争解決学と多岐にわたっています。皆が持つ多様なバックグラウンドからどんな化学反応が生まれるかと、期待が高まりますね。

ニコラス・エマニエル
創価大学大学院准教授。米・カリフォルニア州立大学デービス校にてPh.D.取得。専門は政治学、テーマはアフリカ諸国の民族紛争

エマニエル:私は、日本で教鞭をとるのは初めてです。これまで経験したアメリカやヨーロッパ、アフリカとは異なる地域で学生たちと学び合うことは、私にも大きな影響を与えてくれると思い、楽しみにしています。大学院の授業は英語で行われますが、日本に溶け込むには日本語が必須。私にとって大きなチャレンジですが(笑)、日本語も勉強していきたいですね。

――学生たちは具体的にどんなことを学ぶのでしょうか。

小出:必修科目として、「International Relations Theory(国際関係論)」と「Peace and Global Citizenship(平和・世界市民論)」があります。ほかには国際関係論と平和学の主要科目を選択でき、研究分野に応じて適宜担当教授に指導を仰ぎます。13人の学生に対して8人の教授がいますので、とても手厚い学習環境といえます。

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