真剣議論!社員は会社の飼い犬であるべきか 個人と組織の「完成しない」未来の関係

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受賞した取り組みに未来の組織×個人の可能性を感じる

今年のGOOD ACTION表彰に際しては、「あなたが主人公」というテーマのもと、社員一人ひとりが輝ける社内風土の醸成に成功した八つの取り組みが受賞。たとえば社員同士が少額の成果給と感謝の気持ちを送り合うボーナス制度を設けた「Fringe81株式会社」など、斬新なGOOD ACTIONが目白押しとなった。どのようなところが評価に値したのか、審査員の声をハイライトで紹介したい。

※会社名をクリックすると詳細ページへリンクします

<株式会社パプアニューギニア海産>
「自由に出勤・欠勤できる制度」で職場の争いごとをなくす!人間の本質的な感情と向き合った食品工場の大改革

<株式会社ヌーラボ>
全世界のメンバーが集まる一大イベント!「みんなの幸せを作る」という想いで圧倒的多様性を持つ会社を作る

若新雄純氏/慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科 特任准教授、株式会社NewYouth 代表取締役

「パプアニューギニア海産の武藤さんは『人は信頼できないもの』だとはっきりおっしゃっていました。その思いは応募書類の段階からひしひしと伝わってきたんです。人なんて信頼できない。フリースケジュール制度を進めれば、もしかすると大失敗するかもしれない。それでも武藤さんは、そこから人の可能性を見出そうとして取り組みを続けてきました。つまりそれは、人間そのものと正直に向き合い続けるということだと思います。『挑戦を続けていく』という言葉で締めくくられていたのも印象的でした。
ヌーラボさんの取り組みも、根底は同じだと思っています。メンバーは多国籍で、オフィスもバラバラ。そもそも、一つにまとまるなんていうことは難しい環境です。それでも互いの顔をいつでも思い出せるようにと、大きな予算を割いて一大イベントを開催する。人間がどれだけ弱くて、思い通りにいかないものなのかを真剣に考えているからこそ、これだけの取り組みを実行できているのではないでしょうか」

<Fringe81株式会社>
サイレントヒーローの貢献を共有し、記憶したい―社長の熱い想いから生まれた「Unipos」が欠かせないツールとなるまで

<株式会社UZUZ>
面倒な決裁不要!会社のため、仲間のために自由に使える社内通貨制度が、新規事業立ち上げにもつながった

守島基博氏/学習院大学経済学部経営学科教授

「今回のテーマは、一人ひとりが主人公になるということ。目立たない小さな貢献をしている人はたくさんいます。トップ層や人事からは見えにくい部分ですが、そうした努力が積もって会社がまわっている。その中で、Fringe81とUZUZは、隠れた貢献者に光を当てる取り組みとして、単にサンクスカードではなく、評価をし、成果給やポイントなどを与えています。
人間は、単純なのでお金に近いものがもらえると、とても嬉しくなってくる。ある意味、人間の人間らしい心理を考えられているところが評価に値すると思います。現場で周りにいる人が評価をする。今まで主人公になった経験にない人に、主人公だと気づかせるきっかけを作っているのではないでしょうか」

<渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアム>
「健康経営ができなければ会社を辞める覚悟でいた」―アスリート会社員の「健康への想い」が大企業を変え、渋谷を動かす

<一般社団法人 建設コンサルタンツ協会(若手の会)>
「前例がない」と一蹴されても粘り続け、建設コンサルタント業界初の若手有志組織を設立!全国180名の仲間が集まる

アキレス美知子氏/SAPジャパン株式会社 バイスプレジデント、横浜市政策局男女共同参画推進担当参与

「受賞した取り組みについて、共通しているポイントとして『担当者の強い思いがある』『コンセプトがシンプルである』『巻き込む力が強い』『効果が分かりやすい』『浸透させるための工夫がある』の五つが挙げられると思います。渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアムは、自社に留まらず渋谷区長や経産省も巻き込みながら、さまざまなイベントに加え、担当者の育成にも取り組んでいるところが素晴らしい。
建設コンサルタンツ協会は、若手メンバーの強い思いをメルマガなどで配信しながらも、協会の中に組織をつくるうえで嘆願書を出すなど正攻法も取り入れています。両方とも個人の想いと社会のニーズが共通していることも高く評価できます」

<ヤフー株式会社>
社内副業でアナウンサー!個人のスキルを集め、育成して、会社に新たな価値をもたらした「公式アナウンス部」の活動

<株式会社CRAZY>
築60年の古い町工場を「カルチャー発信」の拠点へ。全員でオフィスリノベーションに挑戦した2週間に込めた想い

藤井薫氏/リクナビNEXT編集長

「社員の中に眠る才能は無限にあり、発露して組織というかたちにしていくと、会社の中にギルドのような新しい組織ができる。表で見えているものだけではなく、裏には大きな組織が生まれる可能性があっても、制度が可能性をそいでいるだけではないか、ヤフーの公式アナウンス部はそうした可能性を感じます。個人も多重な経験や資源を広げられ、実質的な人口は増えるのではないかとも思いました。
また、CRAZYは会社から与えられたものなので、自分たちで作り直す感覚はないかもしれません。そうした中、全員がリノベーションに取り組むことで、職場へのオーナーシップが沸くような感覚を持つきっかけになるのだろうと思います」

八つの取り組みに対する評価だけに留まらず、ディベートワークショップを交えたことで、参加者も組織と個人のあるべき姿を思考するヒントを得たはずだ。課題先進国であり、労働市場がシュリンクし続ける日本。希望を感じる働き方を模索するうえで、すべての働き手が主人公になれる未来を紡ぐGOOD ACTIONが、いま求められている。

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