
若新氏が投げかけた「禁断の課題」でガチンコ議論!

”連絡不要で出欠勤自由” ”嫌いな仕事は禁止”など、職場を盛り上げるユニークかつチャレンジングな取り組みが表彰される、リクナビNEXT主催「第4回GOOD ACTION」では、今年八つの受賞があった。そして今回はさらに、表彰式後に ”人・組織・社会における創造的な活動”を研究する若新雄純氏プロデュースによる、全員参加型のディベート・ワークショップが実施された。
ディベートのテーマはずばり、「社員は会社の飼い犬であるべきだ」というもの。個人が働き甲斐を感じる職場環境について、誠実に模索してきた受賞メンバーたちだけに、テーマが発表されると一瞬どよめきの声が上がった。

まずは、各グループでテーマについて意見を交わすウォームアップからスタート。ほとんどのチームが、「飼い犬」の定義について煮詰めるところから取り掛かった様子。
「社畜ってことですよね」
「忠誠心があるってことじゃない?」
「行動の制限や束縛感が強い気がする」
「飼い主によって、自分の存在が左右されますよね」
「飼いネコ、くらいが一番ハッピーかも」
「一匹で生きていける野良犬にくらべると生命力に乏しそう」
など、さまざまな声が聞かれた。

その後、くじ引きで肯定側2チーム・否定側の2チームに分断。「個人がどう思っているか、また立場は関係なく、肯定と否定という真逆の主張に分かれて考察を深めてほしい」との説明の後、作戦会議を経て、いざ15分の論戦スタート。
「社員は会社の飼い犬であるべきだ」という肯定側のチームからは、「会社の飼い犬というのは、信頼関係を持っていてビジョンを共有していることが考えられます。そのうえで、利益やアイデアという貢献をしてくれる。その見返りに、飼い主は社員に安全な環境を提供するという意味では、理想的な関係性が築けると思います」といった、飼い犬ならではのメリットにまつわる主張が聞かれた。

一方、「飼い犬であるべきではない」と主張する否定側からは、「飼い犬マインドが根付いてしまうと、働く側は受け身になって命令されるだけで、生産性が下がる。未来がネガティブになる」「会社にぶら下がるパラサイト社員が増えるのではないか。そうすると競争力が落ちる、飼い犬同士の競争で足を引っ張り合うので、会社にとっても良くないのでは」という鋭い指摘も飛んだ。
ディベートテーマについて「組織と個人のそもそもの関係を一歩踏み込んで考察してもらいたかった」という若新氏は、ワークショップで目指したことについて次のように語る。

面倒だけど『組織⇔個人』を議論する過程が大切
「本当はほじくった方がいいのに、ほじくらないでほったらかしてしまいがちな問題って、社会にはたくさん転がっていますよね。働き方改革についても、簡単に答えが見つからないとあって、ほじくる機会は乏しいと思います。しかし、働き方改革を進めるにあたって、『組織と個人の関係』は、さまざまな経緯と理由に基づいて構築されているということに目を向ける必要がある。だからこそ焦らずに、戸惑いながらも立ち止まり、議論を重ねて考えを深めることが必要。そのプロセスを楽しむ過程で、新たな見方を手に入れてもらいたい」
曖昧かつ難しい問いに対して、白熱した議論が交わされたワークショップ。その手応えについて、「戸惑いながら新たな見方を手に入れられたのでは」と振り返る。
また、第4回のコンセプト「あなたが主人公のACTIONを応援する」についても伺ってみた。

「本来、個人が組織の中で主役の座を掴むというのは、ある種の権利主張であり、個人VS企業の戦いなんです。それを踏まえて(個人発・雇用主発を問わず)、個人の主役感を尊重する取り組みは、未来的な働き方のヒントになり得ると思います。これまで消費型の時代が長かったことから、たくさん仕事をしてたくさん給与を手にすることが、豊かさの指標でした。しかしこれからは消費をベースにしながらも、『創造体験』が満足度を左右する時代です。組織が責任を負える範囲で、個人が創造的なチャレンジができる土壌を耕し、『主人公になれる可能性』を模索していくことが、新しい個人と組織の関係を形づくっていくのだろうと思います。そのヒントになるACTIONにスポットを当てたこの表彰は、意義があるのではないでしょうか」
では、個人が主人公になるために企業が応援していくには、どのような心構えが望ましいのか。若新氏はこう述べる。

「現代の人の多くは、期待されることよりも、信頼されることによって目標に応えようとするように変わってきたと思います。それは、期待では得られない”安心”を受け取っているからであり、企業の雇用関係でも同じことがいえます。期待は緊張関係を生み出してしまうので『ただ信頼する』、それが主人公であることを模索するうえで必要な企業サイドの応援スタンスではないでしょうか」
そして、このような個人と企業のGOOD ACTIONを積み重ねていくことで、ひいては”良い社会につながる”と若新氏は言う。
「個人や企業の活動が”いいものである”と、その連鎖が結果的に”良い社会”に導くのではないでしょうか。つまりは、選択や挑戦に対する個人の納得感の総量が大切だということ。国や企業がより良い社会を提案するのではなく、これからは個人の充実の連鎖を考えないといけないのかもしれないですね」

受賞した取り組みに未来の組織×個人の可能性を感じる
今年のGOOD ACTION表彰に際しては、「あなたが主人公」というテーマのもと、社員一人ひとりが輝ける社内風土の醸成に成功した八つの取り組みが受賞。たとえば社員同士が少額の成果給と感謝の気持ちを送り合うボーナス制度を設けた「Fringe81株式会社」など、斬新なGOOD ACTIONが目白押しとなった。どのようなところが評価に値したのか、審査員の声をハイライトで紹介したい。
※会社名をクリックすると詳細ページへリンクします
<株式会社パプアニューギニア海産>
「自由に出勤・欠勤できる制度」で職場の争いごとをなくす!人間の本質的な感情と向き合った食品工場の大改革
<株式会社ヌーラボ>
全世界のメンバーが集まる一大イベント!「みんなの幸せを作る」という想いで圧倒的多様性を持つ会社を作る
「パプアニューギニア海産の武藤さんは『人は信頼できないもの』だとはっきりおっしゃっていました。その思いは応募書類の段階からひしひしと伝わってきたんです。人なんて信頼できない。フリースケジュール制度を進めれば、もしかすると大失敗するかもしれない。それでも武藤さんは、そこから人の可能性を見出そうとして取り組みを続けてきました。つまりそれは、人間そのものと正直に向き合い続けるということだと思います。『挑戦を続けていく』という言葉で締めくくられていたのも印象的でした。
ヌーラボさんの取り組みも、根底は同じだと思っています。メンバーは多国籍で、オフィスもバラバラ。そもそも、一つにまとまるなんていうことは難しい環境です。それでも互いの顔をいつでも思い出せるようにと、大きな予算を割いて一大イベントを開催する。人間がどれだけ弱くて、思い通りにいかないものなのかを真剣に考えているからこそ、これだけの取り組みを実行できているのではないでしょうか」
<Fringe81株式会社>
サイレントヒーローの貢献を共有し、記憶したい―社長の熱い想いから生まれた「Unipos」が欠かせないツールとなるまで
<株式会社UZUZ>
面倒な決裁不要!会社のため、仲間のために自由に使える社内通貨制度が、新規事業立ち上げにもつながった
「今回のテーマは、一人ひとりが主人公になるということ。目立たない小さな貢献をしている人はたくさんいます。トップ層や人事からは見えにくい部分ですが、そうした努力が積もって会社がまわっている。その中で、Fringe81とUZUZは、隠れた貢献者に光を当てる取り組みとして、単にサンクスカードではなく、評価をし、成果給やポイントなどを与えています。
人間は、単純なのでお金に近いものがもらえると、とても嬉しくなってくる。ある意味、人間の人間らしい心理を考えられているところが評価に値すると思います。現場で周りにいる人が評価をする。今まで主人公になった経験にない人に、主人公だと気づかせるきっかけを作っているのではないでしょうか」
<渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアム>
「健康経営ができなければ会社を辞める覚悟でいた」―アスリート会社員の「健康への想い」が大企業を変え、渋谷を動かす
<一般社団法人 建設コンサルタンツ協会(若手の会)>
「前例がない」と一蹴されても粘り続け、建設コンサルタント業界初の若手有志組織を設立!全国180名の仲間が集まる
「受賞した取り組みについて、共通しているポイントとして『担当者の強い思いがある』『コンセプトがシンプルである』『巻き込む力が強い』『効果が分かりやすい』『浸透させるための工夫がある』の五つが挙げられると思います。渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアムは、自社に留まらず渋谷区長や経産省も巻き込みながら、さまざまなイベントに加え、担当者の育成にも取り組んでいるところが素晴らしい。
建設コンサルタンツ協会は、若手メンバーの強い思いをメルマガなどで配信しながらも、協会の中に組織をつくるうえで嘆願書を出すなど正攻法も取り入れています。両方とも個人の想いと社会のニーズが共通していることも高く評価できます」
<ヤフー株式会社>
社内副業でアナウンサー!個人のスキルを集め、育成して、会社に新たな価値をもたらした「公式アナウンス部」の活動
<株式会社CRAZY>
築60年の古い町工場を「カルチャー発信」の拠点へ。全員でオフィスリノベーションに挑戦した2週間に込めた想い
「社員の中に眠る才能は無限にあり、発露して組織というかたちにしていくと、会社の中にギルドのような新しい組織ができる。表で見えているものだけではなく、裏には大きな組織が生まれる可能性があっても、制度が可能性をそいでいるだけではないか、ヤフーの公式アナウンス部はそうした可能性を感じます。個人も多重な経験や資源を広げられ、実質的な人口は増えるのではないかとも思いました。
また、CRAZYは会社から与えられたものなので、自分たちで作り直す感覚はないかもしれません。そうした中、全員がリノベーションに取り組むことで、職場へのオーナーシップが沸くような感覚を持つきっかけになるのだろうと思います」
八つの取り組みに対する評価だけに留まらず、ディベートワークショップを交えたことで、参加者も組織と個人のあるべき姿を思考するヒントを得たはずだ。課題先進国であり、労働市場がシュリンクし続ける日本。希望を感じる働き方を模索するうえで、すべての働き手が主人公になれる未来を紡ぐGOOD ACTIONが、いま求められている。