成熟市場でヒットする商品の成功のカギは? ビール逆境時代に注目を集める定番ビール
いまの日本はどの市場も成熟しており、ゆるやかに市場規模が縮小しているところが多い。そんな状況下だとそれまで定番だった商品も新たにヒットすることは一般的に難しい。しかし、一部の市場では「定番のもの」が再びヒットしているという。まもなく歓送迎会の時期。口にする機会も多くなるビールだが、ビール離れは本当に進んでいるのだろうか?
ビール離れは本当に進んでいるのか?
いま若者を中心にビール離れが進んでいると言われる。実際、ビール系飲料の出荷量は13年連続で減少中だ。しかし、一方で売り上げを伸ばしているビールも存在しているという。本当にビール離れは進んでいるのだろうか? いま消費者が本当に求めているビールについて考察してみる。
2017年のビール系市場の出荷量は16年比で2.6%減と13年連続で減少。1992年の統計開始以来、過去最低を更新した。こうした原因は若者を中心としたビール離れが進んでいることに加え、17年6月からの酒の安売り規制による店頭価格の値上がりが響いたことが大きな要因となっている。ビール系飲料は現在、麦芽の使用比率や使う原料によって分類されており、ビール、発泡酒、新ジャンル(第三のビール)のいずれの分野も前年を下回るのは2年連続になるという。
こうした2017年のビール系市場の動向について消費財・小売・流通業界などに詳しいボストン コンサルティング グループのパートナー&マネージング・ディレクターの森田章氏にビール系市場の動向について解説してもらった。
-2017年のビール系市場の動向をどう思いますか?
「2026年の酒税法改正を見据えると、いずれは酒税が一本化されることで価格差が縮小し、低価格を売りにしている発泡酒や新ジャンルの存在意義が薄くなります。そのため、ビールカテゴリーの継続的なブランド強化がこれから大きなポイントになっていくと考えています」
-多様化する市場の中でスタンダードなビールは今後どうなっていくと思われますか?
「スタンダードなビールの価値とは何かがあらためて問われていると思います。たとえば、『今日も一日仕事をがんばった。お疲れ様!』という場面でビールを飲むことは多いと思います。こうしたときに重要なのは、情緒的な価値や、食事を邪魔しないという機能的な価値であり、これはスタンダードビールが得意とするものです。それがあるかぎり、スタンダードなビールは今後も一定の支持を得ていくと思います」
これまでビール系市場は、メガブランドを冠する主力のビールから、世の中の低価格指向に伴い、発泡酒、新ジャンルとカテゴリーを拡大してきた。だが、将来の酒税の一本化によって低価格化に歯止めがかかろうとするなかで、実は「情緒的に充足してくれること」や「食事を邪魔しない」という面でも“スタンダードな味”はあらためて注目されているようだ。