Utility3.0時代の衝撃 5つのDがもたらすエネルギー産業の急激なゲームチェンジ

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基調講演III
Utility3.0に向けて進むプラットフォーム間融合の姿

東京電力パワーグリッド
取締役副社長
岡本 浩氏

東京電力パワーグリッドの岡本浩氏は、ユーティリティ3・0では、脱炭素化へ向けて最終エネルギー消費の電化とCO2を排出しない発電の推進、人口減の中でのインフラ維持、安価な太陽光発電設備の拡大に伴う電源分散化が課題と指摘。デジタル化でモノの提供からコトを提供するサービス化が進めば、電気はサービスの一部になり電力小売という概念がなくなると予測した。インフラ維持のための複合インフラ化、分散電源と大規模発電の統合、データを基にしたさまざまなサービス事業と電力事業のエコシステム形成、それらを支える人材――の4領域の融合が必要と述べた。

パネルディスカッション
Utility3.0へのゲームチェンジ
―業界横断によるイノベーション実現に向けた課題と展望

NPO法人 国際環境経済研究所理事・主席研究員、筑波大学客員教授、21世紀政策研究所研究副主幹、アクセンチュア シニア・アドバイザー
竹内 純子氏
東京電力ホールディングス
経営技術戦略研究所
経営戦略調査室
チーフエコノミスト
戸田 直樹氏
アクセンチュア
戦略コンサルティング本部
素材・エネルギーグループ統括
マネジング・ディレクター
伊藤 剛氏

ファシリテーターの国際環境経済研究所、竹内純子氏は、米国のPVコストが2010年から6年で約4分の1になったデータを示し「日本でも指数関数的価格下落が起こるであろうし、それが前提」と説明し、議論に入った。

東京電力の戸田直樹氏は、太陽光パネルやセンサーなどのキーテクノロジーの価格が劇的に下がっていることから「ビジネスチャンスをとらえ、事業を存続するには、急拡大が始まる変曲点への備えが必要」と指摘。分散化については、燃料のいらない限界費用ゼロのエネルギーが潤沢に利用できるようになる一方、電力需給を一致させる容量・調整力は不足することから、系統を維持するために、これらの価値に対価を支払う制度の必要性を強調した。

アクセンチュアの伊藤剛氏は、新しいエネルギー産業像を描く際は、川下からバリューチェーンを考えること、従来の産業の垣根をゼロベースで考えること、自動車などグローバル産業と統合するためにグローバル市場に目を向けることが重要と強調。電源の分散化、系統の脱炭素化を進めるには、エナジーストレージなどの新技術を一定期間で育成しなければならないとして、イノベーションを誘発する制度設計が必要とした。デジタル化により、節電能力や自家発電による電力を提供するプロシューマー(生産消費者)の拡大など、柔軟性や電力を提供する主体が多様化する可能性も示した。

志賀氏は、IT企業が提供する車による移動サービスに危機感を示し「オープンイノベーションで新産業を起こす野心を」と訴えた。

榊原氏は、スタートアップと組む大企業は、社内にアントレプレナーシップを持った人材の育成がポイントと訴えた。

竹内氏は執筆段階で「エネルギー産業は消費者の利便性を考えてきたのか?」という議論がメンバー間であったことを紹介。ユーザビリティの視点が、ユーティリティ産業の将来像を考えるために大事としたうえで「ほかの社会インフラと融合していけば、2050年に良い未来をのこせる」とまとめた。

クロージング

東京電力ホールディングス
取締役
西山 圭太氏

東京電力の西山圭太氏は、自由化による業界の垣根を越えた乱戦を生き残るには、野望や危機感を持つことが必要だと訴え、「Utilities, be ambitious」と結んだ。