オンワード「オーダースーツ3万円」の狙い 最短1週間で納品!拡大する市場の舞台裏
「KASHIYAMA the Smart Tailor」のオーダーメイドスーツは、生地や衿型、ベント、ポケットデザインなどの項目ごとに希望のデザインを選んでいく、いわゆる”イージーオーダー”だ。ただひとくちにイージーオーダーと言っても、丈や身幅など限られた部分しかカスタムできないものも少なくない。ところが「KASHIYAMA the Smart Tailor」はカスタムできる幅が広く、デザインパターンはジャケットだけでも多数のバリエーションから選ぶことができる。そして何より魅力的なのが、”サイズ補正”だ。その人の体型のクセに合わせてスーツの寸法が補正されるので、たとえば”なで肩”や”ハト胸”の人でも、既成のスーツや簡略的なイージーオーダースーツでは味わえない絶妙なフィット感が体感できる。イージーオーダーの中でもフルオーダー寄りのオーダーメイドスーツと言えるだろう。
ちなみにボディデータの採寸は、全国に13店舗ある直営店で行えるほか、無料の出張採寸サービスを利用して自宅や会社でも行うこともできる。出張採寸は、オンワードグループが誇る全国の熟練フィッターが行う。そして一度採寸すればオンライン上に”マイデータ”が保存され、2着目以降はそれを基にウェブだけで手軽にオーダーできるというわけだ。
カッコよくスーツを着こなすコツとは
「かつて、私も流行のスーツを着て満足している時代がありました。いまの日本も、流行を追うのは好きだけれど、クラシックなスーツのルールを知らないという人は意外と多いと感じています。スーツは生地も大事なのですが、何より身体に合っていることが大切です。正直、身体に合ったものを着るだけで、スーツのレベルが3ランクくらい上がります。手前味噌ですが、海外でうちのスーツを着て歩いていると、よく”あなたはアジア人なのに、なんでそんなにスーツが馴染んでいるんだ”と声をかけられます。そう言われると嬉しいですし、そんな気持ちを多くの人に味わってほしいと考えています」(関口氏)。
これまでオンワードは、90年という長い歴史の中で「スーツの民主化」を進めてきた。イージーオーダーに加え、既製スーツの量産体制の確立などによって、欧米にルーツを持つスーツをここ日本に広めてきたのである。オーダースーツと言えば、昔は20-30万円が当たり前という時代。それをいまは効率化などによって手頃な価格で提供できるようになった。自分の身体にピタリと合ったスーツを、既製スーツとそう変わらない価格で多くの人に提供できるようになったとあれば、それを広めるのがオンワードの新たな責務となったのかもしれない。
「KASHIYAMA the Smart Tailor」のサービスが始まって3カ月が経過した今年1月現在、直営店の売り上げは1.5倍となり、出張サービス・オンライン購入も順調に推移している。「今年の夏には、同じシステムでシャツやレディススーツも始める予定です。また、中国でのオーダーメイドスーツの展開も進めています。そんなふうに将来は”カスタマイズ”を切り口に、メニューをいろいろ広げていけたらいいですね。それはアパレルに限らなくてもいいのかもしれません」と関口氏の野望は大きい。