オンワード「オーダースーツ3万円」の狙い 最短1週間で納品!拡大する市場の舞台裏

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縮小
「スーツは、何より身体に合っていることが大切。身体に合ったものを着るだけでスーツのレベルが3ランクくらい上がります」とオンワードパーソナルスタイル 代表取締役社長 関口猛氏は話す

オフィスのカジュアル化が進む近年、メンズスーツの市場規模は縮小傾向にある。ところが、その中で伸びているジャンルもある。オーダーメイドスーツ市場だ。最近では5万円以内でオーダーメイドできるブランドも少なくなく、スーツをいわゆる”吊るし”(既製品の背広)ではなく、自分流にカスタムしてあつらえるのが身近になりつつある。

オーダースーツ活況の中で”存在感大”の理由

「KASHIYAMA the Smart Tailor」では1着3万円から、最短1週間でオーダーメイドスーツをつくることができる

こうした中で、注目すべきオーダーメイドスーツのブランドがある。昨年10月にサービスを始めた「KASHIYAMA the Smart Tailor」だ。アパレル大手・オンワードグループのオンワードパーソナルスタイルが手掛けるブランドで、オーダーメイドスーツを1着3万円という手頃な価格で、しかも注文から最短1週間でつくることができる。価格だけ見れば同水準のところもあるが、オーダーメイドスーツを3万円で、一週間でつくれるというのは、他に類を見ない。なぜそんなことが可能なのか。狙いはどこにあるのか。そこからあぶり出されたのは、徹底した効率化と、強い”思い”だった。

「オーダーから1週間で納品」という驚異的な納期を実現できたのには、二つのカギがある。まずは注文から生産に入るまでの”生産準備工程”の効率化だ。オンワードパーソナルスタイル代表取締役社長・関口猛氏は、次のように話す。「これまでは、紙やファクスなどをベースに作業を進めていたため、お店からオーダーを工場に伝えて実際に生産が始まるまでに2~3日かかることも当たり前でした。しかし、このたび当社は中国・大連の協力工場を子会社化し、お客様のオーダーが自動でCADデータに変換されるシステムを開発しました。時間を短縮すると言っても、縫製の部分を端折るのはクオリティが落ちるので避けたい。そこで、その前段階の作業をIT化することで、日数を大きく縮めたのです。

スーツを圧縮して梱包する「パックランナー」を採用(写真上)。スーツとは思えないコンパクトなサイズで手元に届く(写真下)

もう一つのカギが、物流の効率化だ。「KASHIYAMA the Smart Tailor」では「パックランナー」というシステムを採用し、スーツをギュッと圧縮して梱包。それを中国の工場から顧客の元へ直接届ける。これまではその間に数回にわたる検品や、スーツをきれいに整えるいわゆる”仕上げ屋”を介していたが、工場と顧客を直接つなげてそれらを省くことで、物流にかかる日数もグンと短縮したのだ。「仕上がったスーツを透明のパックに入れ、特殊な機械でスーツの湿度を最適に調整し圧縮しています。この『パックランナー』システムによりスーツに傷をつけず、しかもかさを小さくできるため、従来よりかなり少ない運送料で輸送が可能になりました。圧縮したスーツがきちんと復元するか、何度もテストを繰り返したのはもちろん、工場直送を実現するために工場を出る際の検品も徹底的に厳しくしました」(関口氏)。

フルオーダーにひけを取らないフィット感

こうしたシステムの効率化の陰になりがちだが、「KASHIYAMA the Smart Tailor」の大きなアドバンテージは、やはりスーツの着心地にある。男性の身体を美しく魅せるというスーツの本質をふまえると、ここがいちばんのポイントに違いない。

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