デジタルマーケティング戦略セミナー 現実とデジタルをつなぎ、感動体験を創造する
講演
デジタルに閉じないデジタルマーケティング
~CDP構築のススメ~
大日本印刷の天本直也氏は、EUのeプライバシー規制をにらみ、Cookie(クッキー)に頼らずに顧客データを統合できるCDP(カスタマーデータプラットフォーム)について説明した。
道具立てこそ現状のDMP(データマネジメントプラットフォーム)と大きく違わないが、CDPの優位性はその目的や考え方にこそある。現在のデジタルマーケティングに不足している中長期の視点を補う顧客生涯価値(LTV)によるマネジメントを可能にするものだ。
具体的には(1)顧客一人ひとりの粒度で中長期に誰にコストをかけるかを判断でき、マーケティング施策の最適化につながる。(2)オンラインメディアと同様に、オフラインメディアもプログラマティックに使いこなすことを前提としたデータプラットフォームである、とした。
同社では顧客体験を感動レベルで創造する「Emotional Experience!」をコンセプトにサービスを提供するという。これは、CDPから得られた示唆を顧客ごとに作成するパーソナライズド動画、個別ダイレクトメールなど、デジタルとリアル双方の施策につなぎ、顧客体験価値の創造を提供するもの。現実に即したサービスを提供していくことで、昨今、企業の課題が顕在化しているデジタルマーケティングの運用(PDCA)も支援すると述べた。
テーマ講演1
データベースで解決する企業マーケティング課題
CCCマーケティングの田代誠氏は、Tカードの購買データを使って、企業のマーケティングをサポートするビジネスについて語った。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループは書店・レンタル店のTSUTAYAをはじめとする事業を展開し、リアル拠点も情報発信メディアとして重視。T会員数は6500万で、利用履歴から購買行動をたどり、家族構成や志向などを把握する。
そこから、ある商品のユーザーになりそうなペルソナ(モデルユーザー)を設定し、テレビ視聴データとひも付ければ、そのペルソナが多くテレビを見る時間帯を特定して効果的なCMを流せる。リアル店舗でサンプル商品を渡した人が購買してくれたかもわかり、施策の効果検証が可能になる。
たとえば、モーターショー来場者を分析して、購買意欲が高まるかをトレースするなどの取り組みを実施。企業は自社顧客データに加え、T会員データを外付けのCRMデータベースの形で活用できるので「さまざまな会社と提携して新しいマーケティングの形を作りたい」と述べた。
テーマ講演2
人とテクノロジーが実現するコミュニケーションの拡張と深化
~PARCOが目指す「24時間接客」プラットフォーム~
パルコの野中健次氏は、商業ビルデベロッパーの立場から、顧客満足のカギはテナントショップのスタッフの接客にあり、パルコでは「スタッフがいつでもどこでも顧客とコミュニケーションできる環境を作るために、ITを活用している」と述べた。
「ショップブログ」の情報を、システムを介してスマートフォンアプリ「ポケットパルコ」に表示する仕組みを構築。さらに、ブログから商品の取り置き予約や、通販注文を受ける「カエルパルコ」システムで、ブログを起点にしたオムニチャネル化を進めてきた。
顧客の来店中は、店内Wi─Fiの位置情報から得られる行動データや、気象データを使ったアプローチも検討。来店後の評価で、スタッフの接客に対する満足度を可視化し、リピート率との相関も示して接客向上の意識付けに役立てる。
また、ロボットによるビル内の顧客案内や、仮想空間で360度の買い物体験ができる「VRパルコ」の実証実験を実施、3Dスキャナー導入など顧客体験の向上に取り組む。テクノロジーの活用で「接客の精度を高め、接客機会を拡張するための支援をしていきたい」と語った。