英国EU離脱で企業の欧州戦略は変わるのか 日本企業の海外展開を支えるスイスの魅力

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英国のEU離脱交渉の難航に伴って、情勢が不透明さを増す欧州市場における、日本企業の拠点について検討する「東洋経済経営戦略フォーラム」が東京・千代田区で開かれた。有識者やスイス大使館、スイス進出企業が登壇。欧州拠点としてのスイスの魅力や可能性について考察した。

[主催]東洋経済新報社
[後援]在日スイス大使館
[協賛]スイス外国企業誘致局

開催あいさつ

駐日スイス大使
ジャン=フランソワ・パロ

駐日スイス大使のパロ氏は、バイオ、製薬、エンジニアリング、環境等の分野でスイスは世界をリードしており、150社もの日本企業が拠点を設けていると述べた。スイスはEU加盟国ではないが、英国が参加していないシェンゲン協定(域内の人や物の移動の自由に関する協定)に加盟するなどEUとの緊密な関係があると強調。

「欧州の中心に位置し、EUのパートナーとして、同じ価値を提供できる」とアピールした。

基調講演
グローバル経済と日本企業
~欧州経済の中のスイス~

東京大学 名誉教授
学習院大学 国際社会科学部教授

伊藤元重

学習院大の伊藤元重氏は、1人当たりGDPが日本の約4万ドルに対し、スイスは約8万ドルという数字を示し、日本がそれを伸ばすには「スイスが強みとするグローバル化がポイントになる」と語った。人口が減少する日本では、グローバル化は海外マーケット開拓の点で注目されるが、より重要なのはイノベーションを起こすためだ、と強調。「海外との切磋琢磨、多様性からしかイノベーションは生まれない」と訴えた。少子高齢化で人材供給が先細り、日本企業はマーケティングやエンジニアリングなどビジネスの中核を担う人材確保が難しくなる事態を真剣に考えるべきとして「日本がグローバル化で得られる最大のメリットは人材かもしれない」と語った。

ただ、モノや人が動くには全地球規模は大きすぎ、グローバル化は、まず地域単位の経済インテグレーションという形で進むと分析。シェンゲン協定や、共同教育プログラムで大学間ネットワークを構築するエラスムス計画など、活発な人の移動が欧州経済のベースにあると指摘した。大枠合意した日本とEUの経済連携協定(EPA)については、長期的にGDPを年2%程度押し上げるインパクトがあるという研究を紹介。極右政党の台頭など欧州の政治は揺れ動いているが、経済指標は悪くないとした上で、英国のEU離脱について「BREXITを前提に世界、欧州の向かう方向を長期的かつ広い視点で考える必要がある」と述べ、日本企業の進出先は英国のウエイトが高すぎる現状を踏まえて、欧州の他の国への投資の必要性も高まるという考えを示した。

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