DeNA×Slackが目指す「別次元の働き方」 全ての業務をSlack上に集約する流れに

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さらに、DeNAは2017年10月から、Slackの全社利用契約に当たる「Enterprise Grid」の利用を開始している。それ以前は、部署やワークスペースごとに有償契約を結んでいたため、「一人の社員が複数の契約チームにアカウントを持つケースが頻発し、アカウントが全社員の3倍に当たる9000まで増えてしまいました。有償版のチームが約40、無償版のチームが約100あり、多い人はアカウントを10個以上持っていました」。Enterprise Gridのメリットの一つは、一つのアカウントで社内の複数のチームに参加できることだった。

現在では、エンジニアが利用するチケット管理システムやナレッジ共有システムとの自動連携が図られており、今後は、財務会計システムや経費精算システム、汎用ワークフローなどから申請された内容の承認作業をSlack上だけで行えるようにしたり、ヘルプデスクへの問い合わせをAIチャットで自動応答できるようにしたり、オフィス内のトイレの空き状況をBotで確認できる機能の実装を行ったりするなど、さまざまな取り組みを進めている。

デスクトップ(左)と携帯(右)でのSlackの表示。複数の人と同時にコミュニケーションができ、カレンダーの共有やファイルの添付も簡単だ

引き継ぎ、社員教育にも有用

当初はエンジニア中心に利用が始まったが、現在では営業、経理、人事、総務などエンジニア以外のさまざまな社員がSlackを積極的に使うようになった。

その結果、新たなコミュニケーションが生まれ出している。「たとえば、ある社員が『廊下にこういう問題があった』と共通のチャンネルにつぶやき、それを総務の社員が見てすぐに対処する、といったことがありました。これは面識のない社員にはメールしにくいことで、今まで起こり得なかった。今後もSlackを通じて新しい形のコミュニケーションが増えていくと思います」と成田氏は話す。

DeNA
経営企画本部
IT戦略部部長
成田敏博氏

さらには、コスト削減や社員教育の面からも、Slackの効果は見逃せない。たとえば、個別のログを読めば、どのような議論があってどう課題解決をしたのか(あるいは解決できていないのか)、ということを把握しやすいために、異動などに伴う第三者への引き継ぎがしやすい。その案件が画期的な成功を収めたのであれば、その過程を確認・検証し、伝えることは社員教育にもつながる。

個別の部門でも、効果が現れ始めている。人事部門では社員のマネジメント力の強化のためにマネジャー専用のチャンネルを作ってノウハウを共有しており、ここでは各マネジャーからも自主的な情報発信がされているという。「Slackによって、従来にはないノウハウや考え方の共有が新たに行われるようになりました。メールなどにはない簡便さや心理的障壁の低さから、各マネジャーからも気軽に情報発信ができるという要素が大きいと思います」。

これはあくまで一例で、DeNAでは部門横断型のプロジェクトに関連して頻繁にチャンネルが作られ、情報交換がより活発に、かつインタラクティブに行われているという。

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