海外で失敗する経営者は何が足りないか? 技術力・サービス力だけでは海外で勝てない

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大石 芳裕
明治大学経営学部教授
日本企業が持続的に成長するためには、海外への事業展開が避けられない選択肢になっている。実際、アジアなどへの海外進出をする企業は増えている。一方、高い技術力・サービス力を武器に海外に出て行ったものの、現地で苦戦している企業も少なくない。その要因はどこにあるのか、また課題解決のためにはどのような取り組みが必要なのか。グローバル・マーケティングに詳しい、明治大学経営学部の大石芳裕教授に聞いた。

アジアでボリュームゾーンの獲得を目指す動きが加速

―海外に進出する日本企業が増えています。背景にはどのような理由があるのでしょうか。また、過去の進出スタイルと比較して変化はありますか。

大石 国内市場が成熟する中で、企業が持続的な成長を実現するためには、海外に出て行かざるを得ないというのが大きな理由です。ただし、国内市場がシュリンク(萎縮)するからというネガティブな考えよりも、海外に打って出て積極的にチャンスを獲得しようとしている企業が増えているように感じます。

進出のスタイルも、時代に応じて様変わりしています。たとえばアジアの新興国に進出する場合、かつては日本や先進国向け製品の製造拠点として、安価な労働力を求めるのが主流でした。現在は、世界の中でも成長著しいアジア市場を見込んで、ボリュームゾーンを獲得しようとする形態が中心です。企業規模も、以前は大企業の製造業が中心でしたが、最近では中堅・中小企業にも広がっており、さらに飲食店などサービス業の進出例も少なくありません。

―ボリュームゾーン向けに打ち出そうとすると、現地のローカル企業のほか、欧米や中国、韓国の企業との競争になります。その中で日本企業はどのような点に留意すべきでしょうか。

大石 残念ながら、日本企業でその分野において成功しているところはそれほど多くありません。高機能で高価格の日本製品をアジアで展開しても、富裕層にしか売れないため、そこである程度のパイを取っても市場としては小さいので大きくは展開できません。ボリュームゾーンに出て行くために、品質をグレードダウンして価格を下げたものの、結局利益が出ず撤退してしまっている企業もあります。

欧米の企業は、既存の製品をグレードダウンするのではなく、最初からボリュームゾーン向けの製品を開発します。そのために、開発、調達、製造、販売などのコスト管理をきわめてシビアに行っています。他方で、ブランド構築のための投資は積極的にしているのです。

ここで注意しなければならないのは、日本企業のブランディングに対する考え方です。現地市場への浸透を優先し、既存のブランドを捨てて現地市場ブランドを立てる企業もあれば、グローバルにブランドを統一しようとする企業もあります。かつて現地市場ブランドを立てた企業の中には、後日ブランドの統一に苦労した企業もありますし、当初から自社ブランドをグローバルに展開しようとした企業の中には、現地市場への浸透に苦労した例もあります。

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