「深海」を舞台に世界と戦う、日本の勝算は?

水深4000m海底探査レースに挑む挑戦者たち

こう語る横田氏は現在、同研究所が開発した「航行型AUV2号機」(以下、AUV2)をコンペに向けて改造するほか、その整備、運用を担当している。今回は、AUVの航行の妨げにならないよう配慮しながら、マッピングソナーやカメラなどを搭載しなければならない。AUVの部品は特殊なものが多く、必要な部品もなかなか入手できないため改造も一筋縄ではいかないという。

しかも、「実際にAUVを海に入れてみないとわからないことが多い」と横田氏は嘆く。「宇宙空間では理論どおりにいく場合が多いのですが、深海ではそうはいかない。海流や水圧と闘いながら、電波も通じない中でAUVを航行させなければなりません。たとえば、AUVは中性浮力を保ちながら潜航させるのですが、左右の重さが数百g違っただけでも沈んでしまうことがあります。海の塩分濃度などにも影響を受けるため、机上の計算どおりにいかないことが多いのです。もしコンペで不具合が発生した場合も、その場にあるもので対応するしかない。そうした準備も必要になってくるということです」。

ただ、AUV2は実績が豊富だ。もともとは研究目的で開発されたものだが、すでにほかのプロジェクトでも使用されている。通常、新しくAUVを製作すると、正常に作動するまで1年以上の調整が必要になるが、今回は”ベテラン”とも言えるAUV2を投入するため、アクシデントが起こる確率は限りなく低いという。

「AUVは自分の子どものような存在」と話す横田氏。その実力にも自信たっぷりだ

「日本の優位性は、世界の最新トレンドを実現していることです。すでに複数のAUVを、母船を使わずに運用し、協調行動もできるようになっています。日本は昔からAUVの研究をしてきましたが、予算の関係もあり、一時は縮小を余儀なくされました。しかし、近年AUVの研究が活発化してきたことで、世界のトレンドに追い付くことができるようになりました。日本のAUVはまだ商業化されていないため、世界の競合相手も日本の動きをチェックできていません。今回、私たちの技術力を見て、欧米勢も驚くに違いありません」(横田氏)。

いまのところAUV2の課題は、存在しないレベルにあるという。つまり、準備は万端だということだろう。コンペで、AUVの性能を最大限に引き出すのが横田氏の最後の仕事だ。

「チームは若手が多く、雰囲気もいい。会議でもいろんな意見が出ます。時には奇抜なアイデアが出て、『本当にこれやるの?』と思うこともあります(笑)。でも、そこから新しい発見がいくつも生まれた。それってすごいですよね。今回のコンペで、日本のAUVがやっと日の目を見ることになります。これを機会に、深海の可能性をより多くの人に知ってほしいと考えています」

日本は国土面積では世界61位だが、領海を含めた排他的経済水域(EEZ)の面積は、世界6位である。EEZにはまだ発見されていない多くの海洋資源があり、それを見つけることができれば、すばらしいことである。横田氏も言う。「だからこそ、まずは見つけておくことが大事なのです。現在チームでは民間企業と共同で研究開発しており、いろんなアドバイスをもらっています。今回のコンペをきっかけにAUV技術の民間移転を進め、大きなビジネスに発展してほしいと願っています」。

これから本格的な挑戦が始まる「Team KUROSHIO」。日本の海の将来を背負った彼らの動向に今後もぜひ注目していきたい。大会やチームの最新情報は、Twitterで発信されている。ぜひ皆さんも「Team KUROSHIO」をフォローし、応援してみよう。

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