深海、過酷な「レース」に挑む挑戦者たち いまだ私たちは「地球の3分の2」を知らない

拡大
縮小
深海探査の世界的なコンペに挑む「Team KUROSHIO」(提供:Team KUROSHIO)

2017年はじめ東京大学生産技術研究所で行われた記者会見で、若き研究者、技術者を中心とする挑戦者たちは自らの挑戦の始まりを高らかに宣言した。深海探査の世界的なコンペに挑む「Team KUROSHIO」が、最初の関門である技術提案書の審査を通過したのだ。「Team KUROSHIO」とは、国の研究機関である海洋研究開発機構(JAMSTEC)や海上技術安全研究所に加え、東京大学生産技術研究所、九州工業大学などの大学、ヤマハ発動機、KDDI総合研究所、日本海洋事業、三井造船などの民間企業で結成された”オールジャパン”のチームである。「Team KUROSHIO」の共同代表でJAMSTECの技術研究員を務める中谷武志氏は、「これは、ほんのスタートに過ぎません。われわれは深海探査に革命を起こします」と意気込む。

日本で唯一勝ち残った「Team KUROSHIO」

海洋研究開発機構(JAMSTEC)
中谷武志

「Team KUROSHIO」が挑戦しているのは、無人探査ロボットを使った超広域高速海底マッピングを競う「Shell Ocean Discovery XPRIZE(シェル・オーシャン・ディスカバリー・エックスプライズ)」だ。1995年に設立された米国NPO法人Xプライズ財団が、「学習」「探査」「エネルギーと環境」「世界規模の開発」「生命科学」など、世界の大きな課題を解決することを目的に開催している賞金付きのコンペの一つである。今回のメインスポンサーは、石油メジャーのシェルだ。

いま石油業界では、海洋石油探査、掘削の大深度化が進み、深海での広域海底地形調査が必須となっている。その高速化、低コスト化は喫緊の課題であり、全世界の知を結集して何としても解決したいという産業界のニーズが、そのままコンペ開催につながったと中谷氏は考えている。

コンペには、世界22カ国、32チームが参加。技術提案書の審査を通過し、2017年11月に始まったラウンド1に進出できたのは、たった19チームだ。現在、アメリカ、ドイツ、スイス、フランス、イギリスなどのチームが残っており、日本からは3チームがエントリーしていたものの、ラウンド1への出場権を手にできたのは「Team KUROSHIO」のみ。ラウンド1の審査を通過し、最終戦となるラウンド2に進出できるのは、さらに10チーム程度に絞り込まれるという。

次ページ深海では人間の指先に約400㎏の圧力がかかる
お問い合わせ
関連ページ
第2回
水深4000m海底探査レースに挑む挑戦者たち
「深海」を舞台に世界と戦う、日本の勝算は?