営業改革
― 進化する営業リーダーの役割 ―

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目標必達を迫って営業を叱咤しても売れない時代。現場を顧みない数字の追求は、若手人材の育成、営業ノウハウの共有を阻害し、営業組織の疲弊をもたらしている。営業改革が求められる中で、営業リーダーの果たすべき役割を考察する「決定版 営業改革―進化する営業リーダーの役割―」が10月、東京・千代田区で開かれた。
主催:東洋経済新報社
協賛:セールスフォース・ドットコム

オープニング

田崎 純一郎氏/セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティングディレクター

セールスフォースの田崎純一郎氏は、叱責、値引き、広告や営業アウトソーシングなどの一過性の施策だけで現状打破を試みる企業へ警鐘を鳴らし、社内の営業改革の必要性を訴えた。「改革は手間がかかるが、お客様が変わる以上、その最前線にいる営業も変わり続けなければなりません」と述べ、改革のヒントを探しながら「楽しんで聞いてほしい」と挨拶した。

【キーノート】
今、営業リーダーは何をすべきなのか。
働き方改革、採用難、ダイバーシティ時代を生き抜け。

北澤 孝太郎氏/東京工業大学大学院特任教授 レジェンダ・コーポレーション取締役

『優れた営業リーダーの教科書』等の著書がある東工大の北澤孝太郎氏は、最近の営業リーダーについて、戦略・戦術が場当たり的で、営業知識も貧困といった傾向に触れ「営業組織を疲弊させている」と述べた。この現状を克服するには、営業の本質として、まず顧客に課題解決の期待感を抱いてもらえるような「自社のあり方」や「営業組織のあるべき姿」についての理想を持つことからスタート。数ある競合の中から顧客に選ばれる理由となる「顧客価値」、豊富な情報を持つようになった顧客の期待に応えるための「営業知識」、自分たちが譲れない「価値基準」という、三つの現実の仕組みと、あり方の理想を照らし合わせ、理にかなった戦略を立て、それを具体的戦術に落とし込むという「北澤モデル」を提唱した。営業リーダーは「前年度比何%増といっただけの戦略設定をしても部下の共感を得られない」として、自ら、経験に裏付けられた営業知識を増やし、顧客価値を考えるとともに、部下が仕事に高い興味・関心を持てるように働き方を変え、その結果生産性を上げることが「営業の働き方改革の神髄」と強調。SFAなどの営業ツールは「画一的な行動管理に使っても営業成績は上がらない」として「顧客の状況に合わせた対応を、部下と一緒に考えるコーチングに使うべき」と話した。

【チャレンジャーセールス】
不況でも常勝する”チャレンジャー・セールス・モデル”

セールスフォースの田崎純一郎氏はソリューション営業に有効な理論として『チャレンジャー・セールス・モデル』を解説した。同書は、B toB営業担当を、勤勉型、関係構築型、一匹狼型、受動的問題解決型、論客型の五つに分類。複雑性の高いソリューション営業には、買い方がわからないという顧客に視点を指導できる、論客型のチャレンジャーが成績優秀者に最も多いという調査結果を示した。

チャレンジャーの育成には、リーダーが営業担当と継続的なやり取りをして、一緒に案件を進めるコーチングが有効と指摘。コーチングは平均的パフォーマーの業績をプラス19%も改善し、ハイパフォーマーの定着率も高めるというデータを示した。このモデルへの営業改革にあたり、マネージャーは、営業活動の阻害要因を特定する調査、製品・サービスの新たなポジショニングを生み出す創造、成功事例を組織内で共有――の三つの役割を担う。「顧客ロイヤリティ獲得要因の半分以上は、インサイトを与えてくれる営業体験が担う。ソリューション販売をする企業はチャレンジャー・セールス・モデルの検討を」と呼びかけた。

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