40代から衰えると言われる「聴覚」の対策とは 聞こえを取り戻すことで広がる新たな世界
「従来の補聴器は指向性があり、正面にいる人の声はよく聞こえても、隣から話しかけられると聞き取りにくいことがありました。人間の脳は、人の声とそれ以外の音を聞き分けています。このような働きを参考にして、会話成分とそれ以外の音を分析し、どこの方角から話しかけられても人の声を認識する機能を開発してオープンに実装しました。また、オープンには言葉と言葉の間に入ってくるノイズを消す機能もあり、会議やパーティなどいろいろな角度から人の話し声がするような場面でも、自然に人の会話が聞こえるようサポートします」
電池切れの心配がない充電式も
ブレインヒアリングという考え方によって新たな補聴器を開発したオーティコンは、デンマークに本社のある世界的な補聴器メーカーだ。110年余の歴史を持つ同社は世界120カ国以上に補聴器と関連サービスを提供しており、1973年には日本法人も設立している。「聞こえに悩みを持っている人たちを第一に考える」ピープルファーストの理念に基づき、オーティコンは補聴器専用の高性能ICチップも開発し、90年代から補聴器のデジタル化、最近ではIoT化も推進してきた。実は「オープン」は、インターネット接続が可能でIoTにも対応。たとえば、ドアホンの音が直接補聴器に聞こえたり、補聴器の電池残量が少なくなったらスマートフォンにお知らせメールが届くなど、生活が便利になる機能も備えている。ブルートゥース接続によって、テレビや電話の音声を直接補聴器で聴くこともできる。
今年の11月には、新たにハイブリッド式の充電器も発売した。従来、補聴器は空気電池を使用するものが主流で、1週間くらいで電池を交換する必要があった。しかし充電式なら電池の交換は必要ない。しかも万が一充電をし忘れたり、使い切ったときもハイブリッド式なので、従来の空気電池を使用することもできるのである。
「携帯電話なら電池が切れてもしばらく不便なだけでしょうが、補聴器の電池が切れるとアラーム音やクラクションなども聞こえにくくなり、危険でさえあります。そのため今は、補聴器ユーザーの多くの方が充電式を求めていらっしゃいます。そうした声にお応えし、従来の充電器よりさらに進化したハイブリッド式を開発したのです」(木下氏)
仕事や人間関係などにも影響を及ぼす可能性のある聴覚。自身や家族の聞こえについて、いま一度意識してみて、補聴器に対する印象や情報も上書きしてみるよい機会ではないだろうか。
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