上智の理工に「グローバル教育と研究力」あり 学生も教授も研究に没頭できる環境がある
また特許の出願に関しても同センターの特許担当のスタッフが、出願にあたってのポイントなどを細かくチェックするなど、全面的にサポートしてくれたという。
「私はずっと基礎研究をやってきたこともあって、産官学連携などといったことには疎かった。研究のことに夢中になって、アピールの仕方がわからない先生方は多いんです。私は同センターに育ててもらっているといっても過言ではありません」(齊藤教授)
次世代の研究者を育成
私立の総合大学の場合、理工学部は他学部と離れたキャンパスにあるケースが多いが、上智大学は四谷キャンパスに理工学部を含む9学部が集まっている。「小さな総合大学」ならではの機動力や密接なコミュニケーションは研究においても効果を発揮している。
「小さいからこそ研究推進センターのスタッフが各先生方の研究内容をとてもよく把握しており、非常に効率良く情報共有ができています。また、自分の研究について他学科の教授に意見を聞く機会も頻繁にあるのですが、それが気軽にできるのも物理的、精神的に距離が近いからこそです。『この話は下の階のあの先生に聞いてみよう』と思いつきで聞きにいけるのはありがたい」(齊藤教授)
現在、共同研究を進めているものを製品化することが当面の目標だが、同時に、次世代の研究者を育てる使命も感じている。齊藤研究室に在籍している中でも次世代研究者の筆頭格といえるのが、特別研究員(ポスドク)の成田隆明さん。成田さんは、上智大学で博士号を取得後、イギリスのダンディー大学に2年半留学。今年7月に齊藤研究室に再び戻ってきた。
近年、日本では博士号を取得しても企業に就職できず、研究室にも所属できない人が急増し、社会問題になっている。通常、大学でのポスドクは研究室単位で雇われるが、雇えるだけの研究費を持っている研究室や欠員がある研究室は限られているため、所属先を探すのが難しいからだ。
「上智で博士号を取った35歳以下の人を対象に、ポスドクとして採用する制度が上智にはあります。もちろん、採用枠には限りがあり選考もありますが、このシステムがあったので海外から安心して帰ってくることができました。今後は、留学先で培った経験も活かしてオリジナリティのある研究を進めていきたいです」(成田さん)
また、研究室の学生からは「国立大学だと大人数の研究室が多いと聞いていますが、上智では研究室も少人数。先生や博士、修士課程の先輩たちとの距離が近く、研究に行きづまった時なども、気軽に相談できるのは心強い」(横山敬祐さん・学部4年)という声も聞かれた。
齊籐研究室には海外からの留学生も所属している。インドネシア・
上智大学は「小さな総合大学」の強みを活かしながら、教員にとっても学生にとっても研究に没頭できる環境を作り上げている。四谷のこの地から、グローバルな視座を持った次世代の研究者たちが世界へと羽ばたいていくことを期待したい。