広告は、嫌われるかの分岐点に立っている 「バズらせる」が目的化すると炎上の危険も

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―デジタルとアナログを総合的に捉えるべきだと。

徳力 従来のマスマーケティングでは取得・分析できるデータが非常に少なかった。しかし、今ではデジタル技術を組み合わせることで、マスメディアに対するユーザーの反応を類推することができるようになりました。デジタルの台頭でテレビ・新聞・雑誌は縮小していくと考えている人が多いでしょうが、デジタル技術で各メディアの可能性を再発見することもできるはず。デジタル技術をマーケティング全体にどう活かしていくのか。その視点が重要なのです。

―その意味で、これから何が重要なポイントになっていくのでしょうか。

徳力 データです。これはデータアナリスト的な高度な解析が必要だという意味ではなく、今まで見えなかったお客様の反応や心の動きを類推できる要素が増えたということです。特に重要なのはデータの組み合わせです。たとえば、テレビCMを見た人がどれだけその商品を買ったのか、これまではよくわかりませんでした。それが今では、マスメディアとデジタルをつなげることで、広告の具体的な効果がデータでわかるようになった。だからこそ企業はデータについて、もっと自分事として考えなければならないのです。

―データが可視化される中で、企業側は何をすればいいのでしょうか。

徳力 量と質の両方の調査をすべきでしょう。量的調査の選択肢が増える中で、使えるものは学び、きちんと使えるようにすること自体は大事なことです。しかし、漫然と量だけを信じるのは禁物です。データを単に大きな数字の塊だと考えるのではなく、お客様の心の動きが想像できるような質的調査も並行して実施すべきです。

―データを活用するためには何に気をつければいいのでしょうか。

徳力 基彦
NTTにて法人営業やIR活動に従事した後、IT系コンサルティングファームを経て、2002年にアリエル・ネットワークに入社。情報共有ソフトウェアの企画や、ブログを活用したマーケティング活動に従事。2006年ブログネットワークのアジャイルメディア・ネットワークの設立に参画。2009年代表取締役に就任、2014年からは取締役CMOとして、アンバサダーを重視するソーシャルメディア活用の可能性の啓蒙活動に注力している

徳力 大量のデータの中から何らかの意味を探っていく。これはプロの仕事だと思います。逆に、多くの人がやるべきことは、仮説をデータで検証する癖をつけるということです。たとえば、Twitterを検索してみるのでもいいので、誰でもやれるはずです。これまでは仮説を立てても検証できなかったものが、無料で多くのデータを閲覧できる時代になった。まずは簡単なデータで自分の仮説を検証してみる。その先に大量のデータを活かすヒントが見えてくるのです。

―デジタル時代で気をつけるべきことは?

徳力 目的と手法の逆転が起こることです。流行っているから、バズらせたいからといって安易に取り入れるのではなく、マーケティングによって何をしたいかという目的を定義しておくべきです。大事なことは、ビジネスのゴールをどう決めるのか。ドラッカーは企業において重要なのはマーケティングとイノベーションの2つだと言っています。マーケティングによって、どのような会社にしていきたいのか。その目的や目標をきちんと持っていれば、自ずとやるべきことは決まってくるはずです。

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