「高血圧」が引き起こす突然の病 30代・40代こそ気を付けたい

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しかも、「まだ若いから」といって高血圧は無縁と考えるのは危険である。世界では10億人の高血圧患者がいると言われているが、日本も高血圧患者は多い。ある国内調査によれば、日本の高血圧患者は約4300万人、およそ3人に1人が高血圧だという*。厚生労働省の「平成22年国民健康・栄養調査」では、60歳以上だと男女ともほぼ6割が高血圧で、若い30代から50代の働き盛りの年代も高血圧が多いことに注目すべきだ。30歳以上の男性の場合、約6割、女性の場合は約4割が高血圧とされている。特に男性は30代でも5人に1人、40代だと3人に1人が高血圧患者である。さらに、男性の高血圧患者は年々増加傾向にあるという。

「毎年の健康診断で血圧を測っているから大丈夫」と考える人も多いかもしれない。しかし、これだけでは安心できない。「仮面高血圧」という言葉を聞いたことがないだろうか。健康診断や病院で測る血圧は正常だが、日常生活において恒常的に高血圧になっている人のことをいう。健康な人は、1日の中で、朝は高めで夜になると低下し、睡眠中に最も低くなるというパターンが一般的だ。だが、仮面高血圧には、早朝に血圧が高くなる「早朝高血圧」、睡眠中も血圧が下がらない「夜間高血圧」、ストレスに血圧が敏感に反応する「ストレス高血圧」などがある。中でも夜間は血圧が低く早朝に急上昇する「モーニングサージ」は、脳・心血管疾患のリスクが高くなるから要注意だ。また働き盛り世代は、職場高血圧とも言われるストレス高血圧に特に気を付けたい。仕事中はずっと高血圧という人もいれば、月曜日などの休み明け初日だけ高血圧の人、大きなストレスで血圧の高い状態が長期間にわたって続く人もいるというから驚きだ。

健康な人でも寒くなると血圧が上がる

さらに血圧は、季節によっても変動する。夏は低く、冬は高いのが一般的で、健康な人でも冬は血圧が高くなりやすいという。冬になると寒くなって熱を体外に逃がさないように血管が収縮し、血圧が高くなってしまうからだ。

そもそも血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が血管を押す圧力のこと。血液を送り出すために心臓が収縮したときの最も高い血圧を「収縮期血圧」と言い、この数値が最高血圧となる。逆に、送り出す血液を貯め込むため心臓が拡張したときの最も低い血圧を「拡張期血圧」と言い、その数値が最低血圧となる。血圧を表すときには「最高血圧/最低血圧」の順で「135/80mmHg」という表記をするが、左側の最高血圧が140 mmHg以上、右側の最低血圧が90mmHg以上だと高血圧となる。

血圧が高い高血圧の状態が続くと、血管に常に強い力がかかり続けることになる。常に強い圧力がかかっていると、それに対応するため血管は次第に厚みを増し、硬くなっていく。これが、動脈硬化だ。そして動脈硬化が進むと、次第に血液がスムーズに流れにくくなり、コレステロールなどの血液中の脂質などが血管の内側の壁に溜まりやすくなる。そうなるとますます動脈が硬くなって、血液が流れにくくなり、特に流れにくいところに血栓などが留まってある日突然、血液の流れがストップして命にかかわる危険な状態になるというわけだ。

*「Miura K,et al:Circ J 77:2226-2231,2013」

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