
国連のSDGs(持続可能な開発目標)を事業戦略に結びつけ、持続可能なバリューチェーン構築を考える「Sustainable Value Chain Transformation 2017 経営戦略にSDGs※を統合せよ」が9月、東京・港区で開かれた。
オープニングリマークスでPwCの鹿島章氏は、サステナビリティによる企業価値向上等を明確に説明して取り組めている日本企業はまだ少数と指摘。「長い時間軸で戦略を変えていく」よう訴えた。官民が協力してサステナビリティ(持続可能性)を追求する先進的取り組みを展開するオランダの政府、企業の代表が登壇。変革の重要性を語った。
主催:東洋経済新報社
メインスポンサー:PwC
※2015年 ニューヨーク国連本部において、「国連持続可能な開発サミット」
キーノートスピーチ
Sustainable Value Chain Transformation
~世界の潮流とオランダの官民連携の試み
オランダ外務省大使のハンス・ドクター氏は、官民が連携することで、企業は、単に利益を追求するだけでなく、国連のSDGsに定められた貧困、環境などの問題解決に向けて「サステナビリティをビジネスに反映させることは可能」と強調した。2013年にバングラデシュで起きた縫製工場ビル倒壊事故の後、政府やメーカー等が話し合って労働環境改善に合意、取り組みを進めている事例に言及。「三方よしの伝統を持ち、限られた資源の中で持続可能な事業に成功してきた日本は、いい位置にいるはず」と呼びかけた。
プレゼンテーション
持続可能性と企業価値の向上
PwCの三橋優隆氏は、CSR・サステナビリティ部門と経営の間のミッシングリンクを指摘。メガトレンド――急速な都市化、気候変動と資源不足、人口構造変化、世界の経済力のシフト、テクノロジーの進歩――が、社会を変えることを理解し、サステナビリティに経営課題として取り組むよう促した。自社のポジションや強味を元に作成した長期ビジョンからビジネス、社会の両面で重要度が高い課題項目を分析、長期事業戦略に落とし込むことを提案。SDGsの17目標は相互に影響し合うので包括的議論が必要と述べた。
ゲストスピーチ
オランダ企業に学ぶ、Sustainable ValueChain Transformationの先進事例
INGバンクの星谷哲男氏は「持続可能な社会の構築に金融サービスが果たす役割は重要で、顧客がサステナビリティに取り組み、そのビジネスモデルがサステナブルになるよう当行が金融ソリューションを通じ支援することで、当行自身もまたサステナブルになることを目指している」と述べた。行内には、サステナビリティ・ファイナンス・チームを設置して、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、水、循環型経済の3テーマを軸に、ビジネス機会を発掘。また、サステナビリティ関連事業に資金使途を限定したグリーンボンド発行や顧客のグリーンボンド発行支援、顧客のサステナビリティ格付けに貸付金利が連動するローンの提供等の取り組みについて語った。
フィリップスの堤浩幸氏は「2025年までに年間30億の人々の生活を向上させるという数字を明示したビジョンに取り組んでいます」と話した。同社は、広く家電事業を展開してきたが、現在はヘルステクノロジーに集中。ヘルスケアが不十分な地域の母子の健康改善にITも活用したイノベーションを進め、事業のムダを省くリーンと、リサイクルによる循環型経済を推進して社会に貢献する。2020年までに総売上の70%を環境配慮型事業からの収入とする目標にも触れ、ゴールを明確に設定する重要性を強調した。
ライフ・マテリアル・サイエンス領域で高付加価値素材を提供するDSMのジェフ・ターナー氏は「CEOは将来世代への個人的責任感を重視していることもあり、社会への環境的な価値提供をベースに差別化を図っていく」と述べた。同社は、社内炭素価格制度を導入して、サステナビリティを考慮した投資の意思決定を推進。CO2の20倍以上の温室効果があるメタンガスが牛のげっぷに多量に含まれることから、酵素でそれを減らす「クリーンカウ」など、栄養、気候変動、循環型経済に向けたソリューションを紹介した。
プレゼンテーション
ResilientなValue Chain構築に向けて
PwCの安井正樹氏は、サステナブル・サプライチェーン・マネジメントの範囲が、調達だけでなく設計開発領域に拡大、二次・三次サプライヤーとも協働する動きを指摘。小手先のサプライチェーンの改善ではなく、経営戦略で大胆に改革するサステナブル・バリューチェーン・トランスフォーメーションの実現を訴えた。「サステナビリティを広めるにはマネタイズを考えることも必要」と、会社の社会課題解決力、事業価値創出力、オペレーション力の三つのケーパビリティを組み合わせ、経営がコミットするように求めた。
パネルディスカッション
徹底検証日本企業の針路
経営戦略とSDGsの統合に必要なこととは?
ハンス・ドクター氏は、SDGsへの取り組みは、政府レベルのトップも強力なリーダーシップを発揮し、多数の企業、人々を巻き込んだ大きな運動にする必要性を強調。
星谷哲男氏は、サステナビリティやイノベーションの推進には人材育成が重要として、同社の教育体制を説明。自身の意見を発言し、徹底した討論と検証をすべきと述べた。
堤浩幸氏は、従業員が会社の成長にサステナビリティは不可欠と信じるには、トップの明確なコミットメントが大事、として取り組まなくてはならない環境の創出を求めた。

ジェフ・ターナー氏は、同社のアフリカでの栄養状態改善の取り組みに触れ、パートナーとの協力でエコシステムを構築、真に正しいと信じてリスクをとるべきと語った。
PwCのピーター D. ピーダーセン氏は、日本でサステナビリティが経営上の重要なビジネスイシューと認知されないのは、これまでCSRとして取り組んできたことの弊害ではないか、と指摘。グローバルの競争軸の一つ、サステナビリティのバリューをサプライチェーンで生み出す発想がなければ競争に取り残される、と価値の転換を促した。
クロージングリマークス
PwCの尾崎正弘氏は、サステナビリティはビジネスと社会貢献との間のトレードオフととらえられがちのため、企業が納得しにくいのが現実だが、持続可能性は、人類が生き残るための必然と強調。企業の成熟ステージの上昇に伴い、断片化された個別最適から、社会の全体最適に向かうとして「ステップ・バイ・ステップのロング・ジャーニー」をすることを求めた。