最先端テクノロジーのベネフィットを体感 NTTテクノクロスのデジタルイノベーション
スペシャルセッション
AIから超AIへ!
―理論から実践へのアプローチではなく、実践から理論へのアプローチへ―
CG、音響、波動、デジタルファブリケーション(デジタルから創造物を制作する技術)などを駆使した作品を生み出すメディアアーティストで、筑波大助教の落合陽一氏は、自ら起業したピクシーダストテクノロジーズが開発した「点音源スピーカー」を紹介。超音波を収束させ、焦点から半径数十センチの範囲だけ聞こえる音のボールを作る技術で、携帯しない補聴器も実現できる可能性がある。目や耳、足など多様な部位が不自由になる超高齢社会のダイバーシティの問題は、テクノロジーで解決できると主張。そこに向けて取り組んでいる、高齢者施設の手すりなどをマーカーにして半自動運転する車いすの研究を説明した。
AIをはじめテクノロジーの進化で、人と機械、物質とVRといった人工物と自然物の区別がつかなくなるデジタルネイチャー、超AIの未来を予想する落合氏は、ブランドの服には、デザインスケッチから始まる制作プロセスのデータセットが含まれているので「AIで学習させると、それらしいものを無限に生み出せる」と、仏教の「事事無碍(じじむげ)」に通じる関係性があると述べた。見つけた課題のデータをディープラーニングのAIに入れ、出てきたものを使うアプローチは、ほかのさまざまな領域にも適用できる。
「理論を学ばなくても、先にエンドポイントの問題を解いてから、結果を考察することでテクニカルな論文を書く」として、研究のアプローチも変わっていく可能性を示した。
パネルディスカッション
AIとは何者か?
―AIと共存する未来社会にむけて何をすべきか―
パネルディスカッションでは、AIの定義や、人との関係などについて議論した。NTTメディアインテリジェンス研究所の小澤英昭氏は「データを持つさまざまな方とコラボして変革を起こす」同グループのAIブランド「corevo(コレボ)」について説明。まず、AIを、自動運転や音声対話などのサービス、音声認識や推論など要素技術、データ処理技術、データ収集の4階層に分類。適応領域として、音声や画像を処理するエージェント、表情などから人の内面の情報を集めるハートタッチング、社会の多様な情報を収集するアンビエント、集合知を構成するネットワークの四つを挙げた。また、大阪大のアンドロイドに同社の対話AIを搭載して雑談させる取り組みなどを紹介した。
山田氏は、AIの極端な定義として、数式化されたものは数学で解く方が早いのでAIではないと指摘。AIの本質は、はっきりしない部分を定式化させることにあるとした。創造的な仕事以外はAIに置き換わるという説に対しては、クリエーティブな仕事の大半は、新しい組み合わせを作り、評価する作業であり、そちらの方がAIの得意領域、と自説を語った。落合氏は、標準的な人間のあり方、個人の能力や権利を規定することで、社会は人を管理してきたと近現代を定義。未来は、管理のルーチンワークにAIを使い、決定だけを人が担うようにすることで管理コストを減らすので、人が一様である必要はなくなる。欧米的近現代以前にあった、多様性を受け入れる社会になるという考えを示した。