最先端テクノロジーのベネフィットを体感 NTTテクノクロスのデジタルイノベーション
同社は今春、先進的ソリューションをスピーディに開発して顧客に届けるという目的を掲げて発足したばかり。串間社長は「NTTの研究所とお客様の架け橋になりたい。開発した技術に新たな価値を加え、ソリューションとしてお客様に提供していきます」と、コーポレートスローガンである「まじわる力でみらいを創る」の実現に向けた意気込みを語り、イベントの幕が開いた。
基調講演
第4次産業革命を戦う新しい経営戦略
元東京海上日動火災保険常務の横塚裕志氏は、今秋にシンガポールで視察した大学のビジネス・コンペティションを振り返り「日本の大学はファイナリストに残っていなかった。世界中が新しいビジネス作りに向けて激しく戦っている中で、日本は周回遅れになりつつある」と危機感を口にした。
第四次産業革命は、たとえばトイレで健康状態を計測することによって住宅設備機器メーカーがヘルスケア産業に参入することを可能にする。ITを駆使したイノベーターに本業を破壊され、既存の会社が消えるリスクはかつてなく高まっているとも言い換えられる。
また、ネットにつながった顧客が営業担当よりも多くの情報を持つようになり、情報の非対称性の逆転も生じており「これまでのビジネスモデルでは生き残れない」と訴える。
今後は、顧客の課題を解決するという基本に立ち返って、イノべーティブなソリューションを生み出し、顧客の成果にコミットする新しいビジネスモデルが必要になると強調。課題を発見するために、顧客を観察し、顧客の視点で悩みを体験するデザインシンキングのフレームワークを推奨した。
また、自前のリソースだけで解決できることは限られるので、さまざまな会社と連携するエコシステムの必要性を強調。一方では、たとえ失敗しようともチャレンジすることを評価するような企業風土の醸成を求めた。
日本は、一人当たりGDPや生産性で、OECD加盟国の中でも下位に沈む。にもかかわらず「日本は一番」という幻想に浸る現状を嘆いた横塚氏は「世界の動きを知り、明日から経営自体を変える取り組みを始めてほしい。問題は企業文化を変えるかどうかの経営者の意思にある」と語った。
テクニカルセッション
インタラクティブな知能
国立情報学研究所の山田誠二氏は、人とAIの共創関係を訴えた。AIが誕生した1960年代を第1次AIブームとして、国家プロジェクトでAI研究を推進した80年代が第2次、そして現在は3回目のブームだと指摘。機械学習の一分野であるディープラーニングが注目され、コンピュータの高速化やビッグデータを生かしたAIの応用を進める。
ディープラーニングのAIは、画像認識・分類に強いのが特徴だが、意図的に誤認識させることもできる。AIのチャットボットが不適切なコメントを発した問題にも触れ「AIは、常識的な推論を苦手とするなど、できないことも多くあります。AIと人は協調し、互いに得意な問題に取り組むのが自然です」と述べた。AIと人とが協調しインタラクティブな知能を実現していくためには、お互いの信頼関係が欠かせない。そこでは、何を頼めばどれくらいの質の仕事が返ってくるのか、といった相手の適正な評価が必要。また、人の認知モデルを取り込んだ、人とAI間のユーザーインタフェースの構築も求められる。一方で、AIが行った処理が理解できる、可読性の高いアルゴリズムの重要性も指摘した。
セッションの中で、商品を売り込む女性キャラクターが胸に手を当ててお願いする「キュート・ジェスチャー」が購買意欲を誘発するという研究に言及した山田氏は、AIの研究には、そうしたインタラクションのモデルを取り込むことも考えるべきと語った。