米国経済の正常化、「設備投資」が決め手 景気・経済観測(米国)

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しかし、このような設備投資をめぐる環境も、徐々に変わりつつある。

先行きの不透明感という点では、先述した経済政策不確実性指数が今年に入ってから急速に低下し、足元では2008年夏以来、約5年ぶりの低水準で推移している。財政の崖の問題を曲がりなりにも乗り越えたことや、歳出削減や税収増など財政面の問題が徐々に解決してきたことが背景にあると考えられる。折しも、低迷が続いていた欧州経済が底打ちの兆しを見せており、米国内外ともに不確実性が低下している状況だ。

金融面の環境が変化していることも見逃せない。6月の本コラムで示したとおり、銀行による企業向け貸出基準は足元で緩和傾向が鮮明となっている。全米独立企業連盟(NFIB)による中小企業を対象とした調査では、「資金調達が難しい」と回答した企業の割合は、景気後退前の水準まで低下しており、経営サイドからも資金調達環境の改善がうかがえる状況だ。

さらに、企業の資本収益率(企業収益÷資本ストック、資本ストックは工場・オフィスビルなどの建築物や、生産機械・事務機器などの設備の総量)の改善も設備投資にとって先行き明るい材料である。資本収益率が改善すれば、それだけ投資のリターンが上昇していることを意味するため、企業の設備投資に対するインセンティブが高まることになるからだ。

不確実性が後退し、試される米企業の底力

こうした環境の改善を背景に、企業の設備投資は来年にかけて回復が進んでいくとみている。実際、ニューヨーク連邦準備銀行など5つの地区連銀が発表する製造業景況調査では、半年先の設備投資の見通しを示す指数が総じて上昇傾向にあり、年後半以降の設備投資の回復ペースが加速する可能性を示唆している。

米国では、過剰債務調整問題の終了を背景に個人消費が回復を続けているほか、住宅市場でも持ち直しが進み、家計部門は健闘している。ただ、真の正常化のためには、もうひとつの柱である設備投資の回復が不可欠だ。米国経済が本格的な回復軌道に戻ることができるのか、設備投資に対する注目度は従来以上に高まっている。米国経済の強みとされた企業のアニマル・スピリットが、いよいよその真価を問われるときが来たと言えそうだ。

服部 直樹 みずほ総合研究所エコノミスト

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はっとり なおき

2009年神戸大学経済学部卒業後、みずほ総合研究所入社。12年11月よりニューヨーク事務所駐在。米国担当エコノミストとして、雇用動向や個人消費、住宅市場、金融政策などの分析に従事。

 

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