中国航空産業を揺るがす不正部品疑惑の内幕 問題は米国にも波紋
ムーグは、不正の指摘について「速やかに適切な調査」を行い、「疑惑の部品は全て飛行の安全に影響しないものだが、全て仕様に合致していることが確認された」とした。
FAAの報告書によると、ムーグが行った720時間超に及ぶ部品のストレステストでも異常は起きず、ボーイングはこれらの部品を航空機に装着したままにすることで合意した。
内部告発
Shi氏や同氏とFAAの間で交わされたメールによると、ムーグでかつて極東アジアのサプライチェーン管理を担当していたShi氏が内部告発ホットラインに接触したことを受け、FAAは2016年3月にムーグの部品の調査に着手した。
Shi氏とムーグの同僚とのメールによると、Shi氏はそれ以前にもムーグで、サプライヤーの蘇州市新鴻基精密部品(NHJ)が認証書類を偽造し、ムーグの許可なく下請けに依頼し、代替原料を使ったとの懸念を指摘していた。
ロイターは、Shi氏が語る内容を独自に確認することはできなかった。
Shi氏の指摘を受けて、上海にあるムーグのサプライヤー品質管理担当部門が2015年8─9月にNHJの内部調査を行い、NHJがムーグに納品する部品の認証書類の偽造を試みていたほか、無断で孫請けに製造を委託していたことが分かった。
認証書類がどの部品向けのものかは、ロイターが確認したムーグのメールからは定かではない。ロイターは、NHJがこうした行為を行う理由を断定できなかった。
「極めて不満が高まっている状況だ。中国の重点成長サプライヤーの1つが信頼できないということだ」と、ムーグの品質管理担当部門のマネジャーは8月25日付のメールにこう記した。
FAAの報告書は、NHJが部品を未承認のサプライヤーに外注する一方、下請け業者は製造記録をねつ造し、決められた製造過程を守らなかったと結論している。FAAは、未承認の代替材料を使用してムーグの部品を製造したとのShi氏の指摘には同意しなかった。
同報告書はまた、下請けで部品のカドミウムコーティングを行っていた南通申海工業科技が、必要の半分しか焼付工程の時間を取らず、製造記録をねつ造したと指摘した。