食と農の未来を切り拓く、新時代の人材育成に迫る。
【「教育力」で、複雑化するグローバルイシューに立ち向かう】
龍谷大学
「食の循環」を体感できる学科横断型のカリキュラムで
幅広い分野の知識を養う
農学部では、植物生命科学科、資源生物科学科、食品栄養学科、食料経済学科(仮称)の4学科を設け、食の生産・加工・流通・消費・再生に至る食の循環プロセスを理解できるように、それぞれの役割や意義を体系的に結びつけた教育を展開する。学科横断型のカリキュラムを軸に、文理融合型の知識基盤を構築する狙いだ。地元の農地を活用した農場実習においては所属学科に関係なくグループを組み、作物の栽培に始まり、生産したものが加工され、どのような経緯を経て市場に並ぶのかまでを体験できるプログラムを構想中。農業のトータルプロセスを実体験できる仕組みになっている。学問的な関心と農業現場のニーズを乖離させないためには、育てる喜びを知り、農家との交流や関連産業への視察・調査を通して現場への理解を深める必要がある。将来的には、グローバルな観点から「食」と「農」の問題をとらえるために、世界各地の農場を訪ねる視察研修の実施も構想しているという。また、学生が地元の農村や自治体と協働しながら職業体験を積むことなどを通して、地域貢献にも力を入れる予定。キャンパスが位置する関西の「食文化」を大切にし、それを支える京都や滋賀の農作物が持つ魅力を発信することで、生産地の発展を支援するのだ。
「本質を知り未来に立つ力」を養う人材育成で、
社会的課題に立ち向かう
龍谷大学は、実利主義に支配されがちな農学教育において、命の尊さや感謝の心を身に付けることを重視する。これは従来の農学部には見られないもので、浄土真宗の精神を建学の精神に掲げる龍谷大学ならではの学びの特徴だ。人類が直面する食と農の諸問題に真摯に向き合い、多面的に物事をとらえ、行動できる「本質を知り未来に立つ力」を備えた人材の育成を目指す。複雑化するグローバルイシューを解決するうえで、現在から将来を展望し、本質を見極められる人材が欠かせない。龍谷大学の香川文庸教授はこう語る。
「持続可能な社会の実現には共存共栄の観点が不可欠。自然科学的知識だけではなく、社会科学的知識と確かな先見性、社会的責務への自覚を持つ人材を育てることが重要です」
近年、多岐にわたる業種で農学に精通した人材が求められている。農学部の卒業生が、豊かな人間性と幅広い専門知識を有した農のゼネラリストとして、多様なフィールドで活躍することが期待される。
龍谷大学は時代の変化に対応し、世界に躍動する大学になるべく掲げた「第5次長期計画」の具体策のひとつとして、自然環境を含む地球規模の発展と調和を見据えた農学教育を展開しようとしている。この龍谷モデルともいうべき農学教育で、「食と農」、言い換えれば「生きる」ことへの向き合い方を学んだ学生が社会にどのような変革をもたらすのか。グローバルイシューの解決に向けた第一歩が踏み出された。