VR/ARは人と仮想世界の架け橋になりえるか 技術がもたらす新たな可能性

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―VR/AR技術は、今後どんな役割を担うのでしょうか。

廣瀬 最近注目されているAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)とVR/ARをセットで考えると、IoTで収集、AIで解析したビッグデータを人にわかりやすい形で示し、物事を動かすことがVR/ARの役割といえるでしょう。現代はネットショッピングなど、世の中全体のバーチャル化が進んでいます。VRを使うことで、現実世界との差をあまり意識することなく、仮想世界を疑似体験することが可能になります。

機能の本質を見据えた発想の転換が重要だ

―VR/AR技術の実用化は、どこまで進んでいますか。

廣瀬 今のところ、ゲームやエンターテインメント領域がリードしていますが、住宅売買や都市開発、インテリアなど空間と関係の深いビジネスでVR/ARはすでに使われ始めています。また、製品設計時に模型の代わりにVRを使うことも、メーカーを中心に始まりました。訓練・教育用途の関心も高く、たとえば博物館は展示物(モノ)だけでなくVRを用いた疑似体験によって、歴史を「コトとして伝える」試みを模索しています。面白いところでは、スポーツ関係者から、日本人が外国人選手の体格の良さに慣れるため、VR/ARを活用できないか、という話も寄せられています。

―今後、私たちはVR/AR技術にどう向き合うべきでしょうか。

廣瀬 VR/ARともに、臨場感やマルチモーダルなどの点で、まだ技術的課題も多くあります。しかし、やりたいことを明確にすれば、それを実現するために技術は進化していくはずです。今申し上げたように、ビジネスへの応用は、比較的容易に想像できる分野ですでに始まっていますが、私は、意外な組み合わせにこそ、大きなチャンスがあると考えます。たとえば私たちの研究室では、AR技術で食べ物の大きさを変え、満腹感を変化させる研究も行っていますが、カロリーという物質的な要素を情報に置き換えた新しいダイエットへのアプローチとして、大きな反響を呼びました。このように、提供したい製品やサービスの原点を情報によって実現しようとするところにVR/ARの可能性が潜在しています。バーチャルには、「物の本質」という意味があります。サービスの本質を見据えた発想転換ができるか。将来に向け、そこがビジネスパーソンに問われているように思います。

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