スポーツ×VR/ARの可能性 ついに実用化!ビジネスへの応用も視野に
相手投手の球筋を再現「0打席目」を体験
ヘッド・マウンテッド・ディスプレー(HMD)を装着すると、視界が360度覆われ、バッターボックスの位置から「Koboパーク宮城」名物の観覧車が見える。相手投手が投げた外角高めのストレートを再現したコンピュータグラフィックス(CG)のボールは、一瞬で目の前を通り過ぎていった――。
このVRを用いたプロ野球選手向けトレーニングシステムは、今シーズンからプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスに導入された。NTTグループが研究している「メディア処理技術」に、レーダーシステムで投球の軌道トラッキングデータを収集していた楽天野球団が関心を寄せ、昨シーズンから実証実験していた。選手は、試合前に相手チームの予告先発投手の球筋、スピードに体を慣らしてから、落ち着いて本番の打席に立つ。効果の定量評価は難しいが、今季の楽天打線は開幕から好調。選手からは「試合前に"0打席目"を体験できる」と好評価だ。
NTTデータは3D空間上に、スタジアムと実際の投手映像、楽天野球団が収集したデータの3つを組み合わせてピッチャーのボールの軌跡を再現した。2つのボールが重ならないよう、投手の映像から実際のボールを消す処理を行うなどの工夫を凝らした。シーズン中もつねに最新データでアップデート。一軍選手だけでなく二軍選手にも使ってもらい、フィードバックを受けて改良を重ねている。
このシステムは、IT企業を親会社に持つ楽天野球団が大量のデータを蓄積していることがカギとなって実現した。技術革新統括本部の風間博之・技術開発本部長は「VR/ARは、データの重ね合わせによる価値創出が重要」と指摘し、データ収集・処理を行うIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)と組み合わせることの重要性を強調。