中堅・中小企業の稼ぐ力を取り戻せ 強い経営体質、組織・営業戦略のつくり方

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経営者事例講演
One platform情報が繋がる、情報を繋げる事で生まれる『生産性の向上』の打ち手とは

渡邉 淳氏/Mipox 代表取締役社長

Mipoxの渡邉淳氏は、ITを使ったスピード経営の取り組みを語った。社長就任直後の2009年に12億円超の赤字を計上した同社は、不採算事業撤退などの”外科手術”が一巡した12年にセールスフォースを導入。物事の徹底的なシンプル化を進めてきた。まず、メールを廃止し、社内SNSの「チャター」利用によってコミュニケーションをオープン化。全社員が、その行動などの情報を発信することで、社長はフィルタリングされた報告に頼らずに、経営判断ができる。「チャターで、どんなことが起きているのかわかるので、報告書や会議もあまり必要なくなる」と、効果に言及。稟議・承認の決裁も平均0.4日に短縮した。また、スピード化、社員のユーザビリティ向上のために、情報を一元化するワンプラットフォームを推進。勤怠、稟議、クレーム、設備資産管理、社内規定など、さまざまな情報をセールスフォースのプラットフォームに集めることで、情報と情報をリンクなどでつなげることも容易になった。たとえば、同社のセールスフォース上で慶弔届けの社内手続きを検索すると、手続き説明だけでなく、申請テンプレートへのリンクも示される。「ムダな手間をなくせば、生産性も向上する。これからもアイデアを出して会社を強くしていきたい」と語った。

特別講演
「衰退の法則」に学ぶ、企業成長の落とし穴
―あなたの会社は大丈夫か。

小城 武彦氏/『衰退の法則』著者

破綻企業の特徴を示した『衰退の法則』著者の小城武彦氏は、その要旨に触れた。非オーナー系の破綻企業の特徴には、予定調和的な意志決定、反対意見をなくすための事前調整重視、有力者の一本釣りによる幹部登用―などを列挙。これらは、普段は問題にならないが、事業環境が変化すると、対立回避志向による意志決定不能に陥り「対策を打てないまま時間を経過させるサイレントキラーになる」と指摘した。一方、変化を乗り越えた優良企業にも同様の傾向があるものの、事実をベースにした議論を経営陣が尊重する規範の存在、人事部局の統制に基づく公正な登用プロセスの二点に決定的な差異があり、それらがくさびになっている。オーナー系の破綻企業は、意志決定がオーナーに一極集中のため、決定を間違えても補正されないと分析。一方、オーナー系優良企業は、辛辣な意見を述べる社外取締役を多数登用したり、オーナーの権限を限定してボトムアップを奨励し、信頼する右腕に社内を鍛えさせるといった工夫で、一本足打法のリスクを極小化している。「企業オーナーにとって、自らの意思決定の間違いを補正できる仕組み、具体的には、社外取締役の登用や信頼できる右腕の採用といった手を早い段階で打っておくことが重要」と語った。