次代を担う経営人材が優良企業に行き「修行」する
「これまで自社の将来に関して、ぼんやりとしか考えていませんでした。『大人の武者修行』に参加することで、数値的な目標を含め具体的な方向が確認でき、自分たちは何者かという立ち位置が明確になりました」と語るのは、北海道旭川市の「車買い取り直販店バイキング(株式会社 直人)」の津山直志さん(現在、代表取締役に就任)だ。
津山さんが参加した「大人の武者修行」は、サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する、これまでにない新しいタイプの人材育成プログラム。「大人の武者修行」の大きな特色は、一口で言えば「社会人のためのインターンシップ」である。次代を担う経営人材を優良企業に送り、一緒に汗をかき働くことを通じて、サービスイノベーションの極意を学ぶことができるという。
「大人の武者修行」に賛同する優れた企業が受け入れ
津山直志さん
株式会社 直人は、先代の社長である津山さんの父親が創業した。津山さん自身は米国の大学でホテル経営などを学んだ後、帰国。日本のホテルに数年間勤務し、株式会社 直人に入社した。
「実はそれまで、父の会社を継ぐことは考えていませんでした。入社するからには次期社長候補ということになるのでしょうが、当時は中古車販売のことはまったくわかりませんでした」と話す。
2016年に先代から「『大人の武者修行』という面白い取り組みがあるから行ってみたらどうか」と言われたときは、津山さんの役職はまだ店舗スタッフの1人だった。
「『大人の武者修行』という名前も初めて聞きました。当時、講習やセミナーなどにも少しずつ参加していましたが、それらの座学とはまったく異なる仕組みだと魅力を感じました」と津山さんは振り返る。
「大人の武者修行」では、日本を代表する優れた企業・団体が武者修行者を受け入れてくれる。津山さんが修行先(受け入れ企業)として選んだのが、福井県美浜町に本社がある株式会社カワムラモータースである。同社は県内に2店舗を有する新車ディーラーだが、2016年度日本経営品質賞受賞のほか、福井県経営品質賞知事賞受賞(2011年度)やハイ・サービス日本300選(2008年度)に選出されるなど、県内外、業界内外で知られる優良企業だ。
「『大人の武者修行』では、自社とは異なる業種の企業を受け入れ先に選ぶ方が多いと聞きましたが、私は自動車販売についてあまり知らないこともあり、あえて同業を選びました。自動車販売におけるサービスの極意を、有名な河村将博社長に直接教わりたいと考えたのです」と津山さんは受け入れ先選択の理由を語る。
地方の活性化にもつながる新たな仕組みに期待
「大人の武者修行」に参加するにあたって、津山さんがもう一つ学びたいと考えていたことあるという。
「リーダーシップです。店舗のスタッフという立場なら、目の前の仕事をこなしていればいいのですが、経営者は会社の方向を示し、チームで目標に向かって行動できるようにならなければなりません」
カワムラモータースでの武者修行は2017年1月末からの2週間。その初日に、津山さんはいきなり洗礼を受けることになる。

「河村社長から開口一番『利益よりも先に5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)』と言われました。ほとんどの会社が、まず利益を出してからこれらに取り組もうとします。順序が逆なのです。それにカワムラモータースでは、どの社員も会議で積極的に発言しているのが印象的でした。若手社員の意見であったとしても、ベテラン社員がそれを素直に受け入れる風土があり、とても驚きました」
そんな津山さんに、河村氏は毎日短いときでも2時間、時には半日かけてリーダーに求められる考え方や行動を教えてくれたという。
「河村社長は、仕事のことを考えない日はほとんどない、忘れられるのは1年にわずか数日だそうです。その多忙な中で貴重な時間を割いて教えてくれることに感銘を受けるとともに、その思いに応えなければと痛感しました」と津山さんは語る。
「大人の武者修行」では、修行者を受け入れてくれる企業に研修費が支払われる。だが、たとえ修行者が一緒に働くとはいえ、費用対効果で考えると決して利益になるような額ではない。河村氏のように、取り組みに賛同し、志高く修行者を受け入れてくれる企業が「大人の武者修行」を支えているのだ。
「一緒に営業や整備の仕事に携わることで、カワムラモータースの企業としての優れた仕組み、優れたビジョンに触れられたと思います。さらに河村社長から『会社をどのように成長させたいのか、そのために、自社の優位性をどう発揮するのか』という視点の大事さを教わりました。会社としての目標を明確にすることや日々の業務における具体的な改善点など、これから何年も悩むところでしたが、その時間を大いに短縮できたと思います。友人や知人はもちろん、一人でも多くの人に『大人の武者修行』への参加を勧めたいです」と津山さんは力を込める。
むろん、津山さんのように二代目、三代目の経営者でなくても、将来の活躍が期待されるリーダー人材が「大人の武者修行」に数多く参加している。企業に勤めながら、他社の職場に飛び込み、優れた企業のDNAや優れた経営者の哲学を学ぶことができるのが「大人の武者修行」だ。ここで修行を積んだ人たちが全国各地で活躍することで地方の活性化にもつながるだろう。
「大人の武者修行」の仕組みとは
「修行」に参加できるのは、中小企業に勤務する人、かつ広義のサービス業の企業で、いずれも企業が将来の経営人材として育成したいと考えている従業員である。修行期間は最短3日から可能だというから、柔軟に参加できるだろう。修行者の受け入れ企業は「ハイ・サービス日本300選」、「日本経営品質賞」、「おもてなし経営企業選」、「日本サービス大賞」などに選出されている中から厳選された100社にものぼる優良企業から選べる。
特筆すべきは「大人の武者修行」は経済産業省の補助事業であることだ。対象条件に合えば、受け入れ企業に支払う研修費の2分の1が補助対象となる。また交通費、滞在費に関しても2分の1が補助されるなど、修行者を送り出す企業の負担が抑えられる仕組みになっていることはうれしい。
「大人の武者修行」は2014年にスタートした。これまで3年間にわたり事業を行ってきたが、修行者を送り出す企業からは非常に好評で、中には、複数年にわたり異なる人材を参加させてリーダー育成を行っている企業もあるという。高い評価を得ていることや、ニーズの高まりに応えて、「大人の武者修行」も今年で4年目を迎える。活動の広がりにさらに期待がかかる。
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日時 2017年10月11日(水)13:30~16:10(13:00開場)
会場 東洋経済新報社 9階ホール 中央区日本橋本石町1-2-1
参加費 無料(事前登録制)
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