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大手を出し抜く、中堅・中小の人事改革とは? 自社の潜在力を信じ、徹底的に変わる決意を

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「どうせウチの会社には、優秀な人材は応募してこない」

中堅・中小企業の経営層からよく聞こえてくる愚痴だ。これに対して、人材サービスを展開するパーソルの総合研究所マネジャー、和田実氏は力を込めて語る。

パーソル総合研究所
マネジャー

和田実

「あきらめないでいただきたい。これはどんな企業にもお伝えしたいことです」

この言葉の真意を解説する前に、まずは労働市場の現状を見ていこう。

日本は今、労働力不足という大きな課題に直面し、今後の日本経済への影響も確実視されている。

「このままいくと、日本では2025年には583万人の労働力が不足する*計算になります。これに対し、生産性向上、女性の労働参加、男女シニアの労働参加、外国人の労働参加という四つの観点からアプローチすることが必要になってきます」(和田氏。以下、発言同)

*出典:パーソル総合研究所『HITO REPORT vol.1』(2016年11月)

オペレーショナルな仕事はロボットに奪われる

この労働力不足を補って国力を保つためには、政府の施策のみならず、それぞれの企業で生産性を上げる取り組みが求められる。だが、中堅・中小企業では「生産性向上」という不確かな目標よりも、「人員確保」という目の前の課題をクリアしようと四苦八苦しているのが現状だ。

「現実的に、優秀な学生は大手企業に取られてしまいます。今や、優秀でなくても大手に行けるほどに新卒は売り手市場です。ある労働力推計では、年代別に見ると若年層(35歳未満)の絶対数が今後10年間で大幅に減少するという予測もあり、若年層の獲得競争は今後さらに熾烈化するでしょう」

冒頭の企業経営者の愚痴は、現実なのだ。そんな状況で、中堅・中小企業はどうやってあきらめずに望みをつないだらいいのか。

まず和田氏が指摘するのが経営層の意識改革だという。

「『ウチの人材でできるのはこの程度の仕事』と自社を過小評価して、大手の取引先に指示された仕事ばかりしている企業が多い。独自の付加価値を付けるのではなく、いわゆるオペレーショナルな、どの企業でもできるような生産性の低い仕事です」

経営者は、付加価値の高い仕事の重要性を認識していても、実際には自社の人材のポテンシャルを十分に信じていなかったり、目の前の仕事で手いっぱいだったりするために、現状に甘んじてしまうという。これでは業績を伸ばすことができず、社員の処遇を上げることもできない。その結果、魅力的な会社になれずに人材獲得に苦労する、という悪循環だ。問題はそれだけではない。

「懸念されるのは、ロボットや人工知能(AI)が発達することにより、オペレーショナルな作業を繰り返すような業務は今後機械、ITに代替されることです。自社の付加価値を生み出せない企業は、その存続自体が問われることになります」

現状を打開するには、自社の強みをどのように発揮していくか、経営者自らがその方向性を見定め、動き出さなければならない。

「ただ、新しい一歩を踏み出そうと決断さえすれば、中堅・中小企業だからこそできることも少なくありません」と和田氏は語る。

中堅・中小企業のスピード感を生かすべき

たとえば生産性向上に向けた人事施策だ。

「一人あたりの生産性を高めるためには、社員の特性や潜在能力を把握したうえで、適切な役割を付与し、職務内容を勘案して配置・育成していく必要があります。まず、ここにミスマッチがあると生産性は落ちてしまいます。逆に、これらがうまくいけば、個人の成果が上がり、社内で別の組織や人員とのコラボレーション、シナジーが生まれやすくなるでしょう。個人の成果が会社の業績に結び付けば適切に評価・処遇をし、そのうえでさらなる動機づけを行います」

上記の要点は、企業の大小を問わず必要なことだが、これらの仕組みを実現させるとなると、規模の大きい企業でのハードルはより高い。

「大企業で人事改革を実行しようとすると大きなパワーが必要となり、時間がかかります。既得権益を持つ社員や組織が抵抗勢力になることも考えられます。一方、中堅・中小企業なら経営トップが『会社をこう成長させたい』という強い意志のもと、トップダウンで施策を実行しやすいので、スピード感を持って実現できる可能性があります」

制度設計などについても、中堅・中小企業なら思い切った取り組みが可能だ。大企業に正社員で勤めていたような知識とスキルを持つ女性でも、一度、出産や育児で職場を離れてしまうと、責任ある仕事に戻ることが難しいこともある。そのような人材が活躍できる職務や組織、働き方などを用意することができれば、彼女たちの受け皿になることが可能になる。

そして、そのような柔軟な人事制度は、今いる人材の能力を引き出すことにもつながる。家庭の事情や自身の希望から、地元の中堅・中小企業に入り、パートや派遣社員というオペレーションの多い職種を選んでいる人もいるが、この中には能力の高い人もいるからだ。

もう一つのポイントとして、「環境整備」に取り組むべきだと和田氏は話す。

「多様な働き方が主流になる中では、社員一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出すマネジメントが必要です。そのためには、社員それぞれが時間や場所にとらわれない働き方を試行でき、会社がそれを支援できる環境づくりが必須になります。そのプラットフォームとしてIT機器は必須になります」

サテライトオフィス、テレワークなどの注目が上がっているが、内実はと言えば、日本企業の60%が依然として、PCの社外への持ち出しを禁止しているという。これでは、いつでもどこでも仕事ができるような働き方を実現することは難しい。

一方で先進的な企業の中には、家庭やカフェなど、会社以外の場所で仕事ができるモバイルワークを含めた柔軟な勤務体系を実現しているところもあるが、そのためには一定のIT環境が必要だ。たとえば、軽くて持ち運びやすく、セキュリティの高いノートPCやモバイルデバイスがあり、さらに、ネットワークやクラウドなどのインフラが整備されていて、必要に応じてリモートで会議にも出席できる。そんな環境だ。

今どきPCのない企業はないだろうが、今後はその使い方が問われることになる。ITを活用することで働き方を見直し、最終的には独自の付加価値を創出しなければならない。

「人材の見方・活用の仕方を変えれば、業績を伸ばすこともまだまだ可能なはずです。どんな企業でもあきらめずにいろいろと試行錯誤していただきたいです」

あらゆる企業に効くような万能な処方箋はない。ただ、改善のヒントは社内外を問わず、至る所にあるはずだ。

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