大手を出し抜く、中堅・中小の人事改革とは? 自社の潜在力を信じ、徹底的に変わる決意を

拡大
縮小

まず和田氏が指摘するのが経営層の意識改革だという。

「『ウチの人材でできるのはこの程度の仕事』と自社を過小評価して、大手の取引先に指示された仕事ばかりしている企業が多い。独自の付加価値を付けるのではなく、いわゆるオペレーショナルな、どの企業でもできるような生産性の低い仕事です」

経営者は、付加価値の高い仕事の重要性を認識していても、実際には自社の人材のポテンシャルを十分に信じていなかったり、目の前の仕事で手いっぱいだったりするために、現状に甘んじてしまうという。これでは業績を伸ばすことができず、社員の処遇を上げることもできない。その結果、魅力的な会社になれずに人材獲得に苦労する、という悪循環だ。問題はそれだけではない。

「懸念されるのは、ロボットや人工知能(AI)が発達することにより、オペレーショナルな作業を繰り返すような業務は今後機械、ITに代替されることです。自社の付加価値を生み出せない企業は、その存続自体が問われることになります」

現状を打開するには、自社の強みをどのように発揮していくか、経営者自らがその方向性を見定め、動き出さなければならない。

「ただ、新しい一歩を踏み出そうと決断さえすれば、中堅・中小企業だからこそできることも少なくありません」と和田氏は語る。

中堅・中小企業のスピード感を生かすべき

たとえば生産性向上に向けた人事施策だ。

「一人あたりの生産性を高めるためには、社員の特性や潜在能力を把握したうえで、適切な役割を付与し、職務内容を勘案して配置・育成していく必要があります。まず、ここにミスマッチがあると生産性は落ちてしまいます。逆に、これらがうまくいけば、個人の成果が上がり、社内で別の組織や人員とのコラボレーション、シナジーが生まれやすくなるでしょう。個人の成果が会社の業績に結び付けば適切に評価・処遇をし、そのうえでさらなる動機づけを行います」

上記の要点は、企業の大小を問わず必要なことだが、これらの仕組みを実現させるとなると、規模の大きい企業でのハードルはより高い。

次ページ既得権者が抵抗勢力になることも
関連情報