安倍改造内閣、「反対勢力分断」も「やぶ蛇」か 岸田氏重用、石破氏孤立も「総裁3選」不透明に

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こうした首相の人事戦略は「低下した求心力を高め、来年の総裁3選を確実にするための権謀術数」(自民長老)に基づくものだ。ただ野田氏の「次期総裁選出馬宣言」が"安倍3選戦略"を不透明にした側面もある。首相が「挙党体制の象徴」として取り込んだ野田氏が現職閣僚でも総裁選に出馬する意思を明確にしたことで、岸田氏も「党3役なら次期総裁選出馬は問題ない」(側近)ということになる。

出馬が当然視される石破氏に加え、岸田、野田両氏が来年9月に名乗りをあげれば、「多数派工作が極めて流動化する」(自民幹部)ことは避けられない。さらに、総裁選出馬経験がありこれまでも出馬の意欲を隠さずに来た河野氏も推薦人確保に動く可能性がある。そうなれば「石破氏を孤立化させ、『安倍vs.石破』に持ち込んで圧勝する」(細田派幹部)という当初の戦略は破たんする。このため安倍陣営からは「野田氏や河野氏の起用は『藪(やぶ)をつついて蛇を出した』のでは」(同)との不安の声も出る。

支持率アップ難しく、改憲スケジュールも断念

そもそも今回の「出直し人事」は「危険水域」に入った内閣支持率の下落に歯止めをかけるのが主目的だったはずだ。その意味では骨格維持で経験者を優先起用した実務的布陣は「新味に欠け、支持率アップにはつながりにくい」(首相周辺)ことは間違いない。だからこそ首相も「結果を出すことで国民の信頼回復に結び付ける」と頭を下げたのだ。ただ、直前に辞任した稲田朋美元防衛相も含めて"問題閣僚"と"お友達閣僚"をほぼ一掃したことで「5割を超えて急上昇した内閣不支持率」をある程度低下させる効果は見込めそうだ。

首相は記者会見で憲法改正についても「日程ありきではない。これからは党でしっかり議論し、国会での議論が深まっていくことを期待する」と語った。これは、5月3日の憲法記念日に明言した「安倍改憲」のスケジュールの事実上の断念を意味する。改憲案の党内とりまとめを託されている高村正彦副総裁が「慎重論」を述べたこととも連動している。

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