メタボ改善や生活習慣予防のためには、栄養バランスのとれた食事と適度な運動、休息が基本であり、重要なことは、多くの人が理解されているだろう。診断結果に基づき何らかの注意を受け、生活習慣を見直しましょうと言われても、日々の忙しさを言い訳に実行できていない、というのはよくあるパターンだ。
継続できない高いハードルを掲げるのではなく、まずは自分が取り組みやすいことから「健康習慣」を意識し、結果に繋がれば、前向きに取り組めるようになるものだ。ここでは、食事面でいくつか取り組みやすいポイントや注意すべきことをご紹介しよう。
早食いにならないようによく噛んでみる
これまでも肥満と早食いとの関係はさまざまな研究報告があるが、近年一つ注目の研究報告があった。岡山大学大学院と同大保健管理センターの共同研究の報告※1では、大学生を対象に長期追跡調査を行い、早食いを続けるうちに肥満になることを確認した(平成26年)。早食いの者は早食いではない者よりも4.4倍、男性は女性よりも2.8倍肥満になりやすいことがわかった。さらに興味深い点は、「油っこいものを好んで食べること」や「満腹まで食べること」よりも「早く食べる」方が肥満に影響することだ。
早食いを自覚する者は、一口当たりの量が多く、噛む回数が少ない傾向があるそうだ。ということは、この逆をすればゆっくり食べることにつながる。つまり一口にたくさん詰め込まず、よく噛むこと。口腔ケアや肥満治療の分野で、一口20〜30回咀嚼が推奨されているが、実際には難しいものだ。
早食い習慣の自覚がある人は、30回と高いハードルを設けるよりも、まずはより「噛む」ことを意識することから始めよう。そのためには、例えばカレーを食べる場合具は大きめのカレーを選ぶ、こんにゃくなど弾力のある食品や歯ごたえのある乾物、またご飯は精製度の低い玄米や発芽玄米雑穀などを選んでみよう。
よく噛むことに慣れると素材の味もわかり、薄い味付けでも美味しく食べられ、減塩にも繋がる。「よく噛む」ことは、お金もかからず誰にでも今すぐに始められる。
ベジタブル+1ベジタブルファースト
素食プランナー
南 恵子
NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、エコ・クッキングナビゲーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在は食と健康アドバイザーとして、執筆、講演、料理教室の開催、商品企画の協力などを中心に活動中。All about[食と健康]ガイドを担当。著書に電子書籍『誘惑に弱い男(ひと)のための健康食事術』(ごきげんビジネス出版)など
例えば野菜は、1日350グラム以上食べることが望ましいといわれている。それはなぜかというと、野菜の摂取量を増やすことで満腹感が得られるうえ、野菜はカロリーが低いため、肥満や糖尿病の予防に役立つ、また生活習慣病予防に役立つと考えられるカリウムや食物繊維、抗酸化ビタミン類、各種のファイトケミカル等が含まれているからだ。
しかし専門家でない限り、食事摂取量を計算するのは難しい。たとえば平均的な日本人の男性(40〜50歳代)の野菜の摂取量は280グラム程度で、後一皿分足りない※2。当然人により摂取量はさまざまだが、メタボ健診で注意された人は、積極的に野菜や海藻、きのこや豆類などをプラス1品食べることを意識してみよう。例えば、野菜スープ、野菜サラダ、酢の物、青菜のお浸しやひじきの煮物、それも無理なら野菜ジュース(無糖)を加えても良いだろう。
また肥満や血糖値が気になる人は、食事の際に野菜や海藻、きのこ、豆類など、食物繊維の多い料理から先に食べてみよう。空腹にご飯や麺類などの主に糖質を含む食品を食べると血糖値は急激に上がりやすくなる。そのような食習慣が続くと、余った糖質が中性脂肪として蓄積されやすくなる。食物繊維の多い食材やクエン酸などは、血糖値の上昇を穏やかにする働きがあると考えられている。その効果は今後も科学的な検証は必要だが、こうしたベジタブルファーストを実践することが、野菜を以前よりも意識的に摂取することにもつながって、相乗効果になるかもしれない。
医薬品、トクホ、健康食品の違いを知ろう
人間というのは、つい楽にできること、手っ取り早く効果の出るものを求める。そんなときに、手を伸ばしがちなものが健康食品だ。「健康食品」という言葉は、法律的には明確化されていないが、肉や魚、野菜などのあきらかな一般食品に対して、「健康食品」とは健康の維持増進に寄与する食品で、いわゆる健康食品+保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)に分類される。
参考/厚生労働省「健康食品」、消費者庁「多様な健康食品」、国立健康・栄養研究所「健康食品の基礎知識」
健康食品の中にはメーカー独自の試験を実施されたものもあるが、安全性や有効性また悪影響についても科学的な根拠が明確にされずに販売されているものが多い。こうした玉石混交の健康食品の問題点を改善するために生まれたのが特定保健用食品(以下、トクホ)だ。トクホは、国が個別に製品ごとに有効性や安全性を評価し承認し、通常の食品には認められていない特定の保健用途を表示することができる(他に規格基準型や条件付きなどの種類もある)。
有効性が評価されているというと、トクホは医薬品のように病気を治療できると勘違いする人も少なからずおられる。しかしトクホの利用目的は「健康の維持・増進に役立つ、または適する」こと。医薬品が病人を対象にしているのに対して、トクホを含めた健康食品は健康に不安を感じる人、栄養不足が気になるなどの状態で、病気になる前の健康な人を対象としている。これさえ食べていれば大丈夫、というわけではないことを認識しよう。
健康習慣は自分のためだけでなく愛する家族のため
動脈硬化などの生活習慣病の怖いところは、初期症状は沈黙のうちに進むことだ。健康習慣は美容にもよい場合が多いので、女性は比較的関心が高いのだが、男性は無頓着なことが多い。しかし、きちんと体や生活習慣と向き合うことは、自分自身はもちろん、守るべき愛する家族のためにも大切なこと。また近年は企業経営の面からも、社員の健康管理や健康づくりに配慮することが重要と考えられるようになってきた。
トクホなどを生活に取り入れることによって、健康習慣を意識づけるようになり、塩分や食べ過ぎを控える、ウォーキングするなど、現在の生活習慣を見直すきっかけ作りになるなら、それがトクホとの正しい付き合い方といえるだろう。