超高精細な次世代液晶「8K」。今まで映すことができなかった映像の細部、さらに立体感や空気感さえも映し出す…。8K映像は、もう「美しさ」という単位では語れない。それ以上の、目には映らない「何か」も感じることができる未来の液晶技術。そんな「8K映像が伝えるべきもの」をテーマにしたストーリー
2018年の放送開始に向け8Kディスプレイを先行投入
来年2018年12月より、8Kの実用放送が始まる。また総務省の資料によれば“目指す姿”として、2020年からは本格的に8K放送も普及し、多くの視聴者が市販テレビで8K番組を楽しめる時代がやってくる、とされている。
そうした中、シャープが今年6月30日から8Kモニターの販売を開始した。同社はこれまで2011年に世界で初めて8Kディスプレイを開発、15年には「85型8Kモニター」を販売してきたが、今回、「70型8Kモニター」を追加投入する。
この8Kビジネスを指揮するシャープのディスプレイデバイスカンパニー デジタル情報家電事業本部 国内事業部の事業部長である宗俊昭広氏は次のように語る。
デジタル情報家電事業本部
国内事業部 事業部長
宗俊 昭広
「もともとテレビのブラウン管はガラスでつくったデバイスで、大きさにも制限がありました。しかし、我々はダイナミックな映像を視聴者にもっと楽しんでほしいと、他社に先駆けて大型化と高精細化の技術を家庭向けテレビに取り入れてきました。いわば、液晶ディスプレイの技術の進化をテレビに先取りするようなかたちで革新を続けてきたのです。そうした長年の成果のうえに生まれたのが、この8Kディスプレイなのです」
8K放送の大きな特徴は3つある。1つは、現在のハイビジョン(2K)の16倍の画素数で構成された高精細映像で、画素数の粗さが気にならず、視野も広がり、圧倒的な臨場感を楽しむことができることだ。2つめは、HDR(ハイダイナミックレンジ)という映像が本来持っている明るさや色、コントラストを表現できる技術に対応することで、肉眼で見る感覚により近い映像を番組で観ることができるようになったこと。そして、3つめは、映像の各シーンにマッチした臨場感を味わえるサラウンド音声を上下方向だけでなく、左右・後ろからも楽しめる22.2ch対応だ。
いわば、8Kはこれまでのテレビとは異なり、超高精細な大画面で、全方向から包み込まれるような音を実現。まさに「臨場感」から「超臨場感」の世界に突入したと言えるだろう。
8Kの解像度は1つの最終的な到達点

では、シャープでは、8Kのどのような技術に注力してきたのだろうか。そのポイントの1つは、前述のように実物が目の前にあるかのような、リアルな臨場感を感じられるようになったことだ。確かに、その実物感には目を見張る。8K映像では、実物と見分けがほとんどつかないほどの実物感があり、肉眼で見比べて実物と映像のどちらが本物か問われても、答えに窮してしまうほどだ。同じくディスプレイデバイスカンパニーのデジタル情報家電事業本部 国内事業部8K推進部長の高吉秀一氏もこう話す。
デジタル情報家電事業本部
国内事業部 8K推進部長
高吉 秀一
「『8Kの次は16Kですか?』という質問をよく受けるのですが、実はそうではないのです。8Kの解像度は人間の目で見るうえで、実物とほぼ変わらないレベルになります。つまり、8Kは映像分野において、1つの最終的な到達点となるのです」
また視聴距離についても、家電量販店などでは2Kテレビは高さの3倍が最適だという説明がよくあるが、4Kなら解像度が上がるため1.5倍。8Kならば0.75倍になる。今回シャープが発売する「70型8Kモニター」の高さは約90cm。理論上の最適視聴距離は約70cmとなる。したがって、本来なら70cm以上離れると、4Kとの差はなくなるはずだが、実際にはそうはならない。8Kでは、高い解像度によって階調差が生じることで、70cm以上離れても3Dのような立体感を味わうことができる。
さらに、8K映像では、これまで目に見えなかったものを映し出すことができ、絵画などで気づかなかった新たな発見と感動を生み出すことができる。
「試験放送の番組では、8Kカメラで撮影した約60cm×70cmの絵画の映像をズームアップしていくと、これまで肉眼では気づかなかった微細な描写を見られることや、巨大な美術品の一部を拡大してみると画家の筆のタッチまで見えるようになるなど、8Kは新しい発見を生むきっかけとなります。ほかにも内視鏡など医療分野での活用も検討されるなど、8Kは映像の世界のビッグデータとしての活用も期待されているのです」(高吉氏)
それだけではない。今回シャープが発売した「70型8Kモニター」は、15年に発売した「85型8Kモニター」に比べて、家庭用テレビを見据えた製品設計のもと、奥行き、重量、消費電力を大幅に削減させることに成功した。
「85型モニターは畳一畳分くらいの大きさで、奥行きは約20cm、重量は100kg、消費電力は1440wもありました。しかし、今回の70型では内部の回路基板数を3分の1以下に削減、冷却用ファンも85型では10個以上あったものが70型では0個を実現。その結果、消費電力を約3分の1(470W)、重量を約半分(42.5kg)にすることができたのです」(高吉氏)
今後は8Kを軸にしたエコシステムを構築
シャープでは2018年の実用放送に向けて、視聴者のニーズに合わせたサイズバリエーション、関連機器の拡充といった家庭向けへの本格展開を見込む。
「8Kの登場はマーケットの構造を変える起爆剤になります。そのため家庭用向けに、サイズバリエーションや普及価格への対応ほか、8K放送対応のチューナーやレコーダーについても開発を進め、新しいマーケットを創出したいと考えています」(宗俊氏)
シャープの強みは液晶パネルの開発から製品設計、テレビの製造まで、すべて自社で対応していることだ。今後も画像処理用大規模集積回路(LSI)の自社開発を進めるなど「One SHARP」で高性能・高品質を実現していく方針だ。
デジタル情報家電事業本部
栃木開発センター
第二開発部 課長
武田 倫明
「パネルやLSIは外部調達、製造も外部といった水平分業体制が今盛んですが、やはり8Kといった新しい技術に取り組むためには、自社の中できちんと開発し生産していくことが高いクオリティーを保持する秘訣だと考えています」と語るのは同じくディスプレイデバイスカンパニーのデジタル情報家電事業本部 栃木開発センター 第二開発部課長の武田倫明氏。
8Kは今後、医療分野、映像編集やデザインの現場、デジタルサイネージやデジタルアーカイブの分野など放送以外のさまざまな分野でも活用が期待されている。
「8Kディスプレイを、単純に映像を表示するだけでのデバイスとしてではなく、8Kを中心としたエコシステムを構築することで、いろんな用途への活用を提案していきたいと考えています。そのためにも、放送編集システムへの参入、クラウド型ネットワークサービスの充実、映像機材の拡充といったことを手始めに、トータル・ソリューションとしての8Kビジネスを進める方針です」(宗俊氏)
臨場感はもとより、立体感や実物感、さらにはその場の空気感さえも伝えられる8K。シャープは、この新しい感動や驚きの体験を家庭のリビングに届けることで、今後も世界中の映像文化の発展と向上に貢献していく方針だ。
