「RPA」は、すでに人を代替し始めている
これらの課題解決にRPAが有効な場合が多くあるということです。複数のアプリケーションをまたぐとはいえ、RPAができる仕事は、人間にとっては単純な反復作業です。RPAに単純作業を任せ、貴重な人材にはもっと生産性の高い仕事に集中してもらうべきでしょう。そうでもしないと、従業員のモチベーション維持や人材の採用などに大きな影響を及ぼすだけでなく、経営上のリスクにもなりかねません。
――企業が直面する課題の解決を含め、RPAにはさまざまな効果が期待できそうです。日本企業の関心は高まっているのでしょうか。
信國◉RPAの概念自体は決して新しいものではなく、4、5年程前から、いくつかのソフトウエアはありました。最近になって急に企業が動き出した理由としては、まずオフショア拠点の人件費の高騰が挙げられます。これまでは、コストを下げるためにインドや中国などのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を利用していた企業が、なかなかコストメリットが出せなくなっています。
さらに前述したような少子高齢化は、これまでは市場の成熟という観点で語られていたのですが、ここにきて労働力不足という問題が現実のものになってきました。当社だけでもこの半年間で300社以上からRPAに関する問い合わせがあり、すでに数十社のプロジェクトが稼働しています。一気に関心度が高まっています。そこで、大切なのは、何のためにRPAを導入するのか、RPAを導入することで空いた時間で、人が何をするのかということです。
RPAは、経営者が率先して取り組むべき
――その点ではRPAの導入は、一部門だけの問題ではなく、経営者にとっても率先して取り組むべきテーマだと言えそうです。
信國◉そのとおりです。RPAの導入を単なるITの導入の話ではなく経営戦略に基づくオペレーション/組織改革ととらえるべきです。そのため「わが社は今後、何を強みにしていくべきか」という経営戦略の方向が重要になります。人材の採用、育成なども変わるでしょう。これらを意思決定するのはまさに経営者の役割です。
――RPAや人工知能(AI)が普及することで、ホワイトカラーの仕事が奪われるのではないかという声もあります。将来像をどう描いていますか。
信國◉現在のRPAは電子データの収集やルールに従った処理などを得意としています。今後は画像認識や音声認識、紙に書かれた手書きのデータなどの認識のほか、ルールにない処理や機械学習などのさまざまな機能とRPAの組み合わせが増えてくると考えられます。
人は、ルールに基づいた反復作業ではロボットにかないません。一方で、高い志をもってチームをまとめ事業を推進したり、前例のないことに意思決定をしたりするといった、人間でなければできない仕事は必ず残ります。また、RPAの普及により、これらのテクノロジーに精通し、企業とともに改革を進めていくコンサルタントやエンジニアが数万人という単位で必要になります。雇用市場の活性化という点でも期待できます。
企業にはぜひ、RPAを活用し、「わが社でなければできないこと」「本当にやりたいこと」に時間を振り向け、競争力を向上していただきたいと願っています。