コスト削減による競争力向上の視点~
経済のグローバル化が加速する中、企業にとっては本社機能の強化による競争力の向上が課題として浮上しており、そのためのIT基盤構築が急がれている。
各分野の専門家の知見を自らのものにしようと、会場はいずれも盛況であった。

[基調講演]
サービスイノベーション時代の
企業情報システム
グループマネージャー兼 未来創発センター上席研究員
古明地 正俊 氏
フォーラムは、野村総合研究所の古明地正俊氏による基調講演で幕を開けた。まず古明地氏は、同社が多様な技術の中から最適な技術を選別するITナビ活動を行っていることを紹介したうえで、2010年代はクラウドコンピューティングがインフラの主流になっていることを指摘。続いて、キーになる技術トレンドとして、「産消逆転」、クラウドコンピューティング、ビッグデータの三つを挙げた。なお「産消逆転」とは消費者のIT利活用環境が企業のそれを凌駕している状況を指す。
古明地氏は、こうしたトレンドを背景に、今後はIT自体がサービス化される方向に進むとともに、ITを活用してサービス分野のイノベーションを起こしていくことが重要になっていくと指摘。クラウドコンピューティングは容易にコスト削減ができる分野での利用が拡大しているが、今後はサーバーと比べ迅速にIT基盤が構築できるというメリットを享受できる分野での利用が拡大するという見方を示した。
[講演]
帳票システムの基盤化と
アウトプット・マネジメントの重要性
帳票事業部 製品戦略マネージャー
谷口 功 氏
さまざまな帳票運用基盤ソリューションを提供しているウイングアークの谷口功氏は、帳票という切り口で講演を行った。谷口氏はデータを基にIT投資が増加傾向にあること、投資分野の優先順位ではIT基盤の統合と再構築がトップであることを示したうえで、官公庁や民間での事例を紹介。帳票のアウトプットを基盤化するだけでも効率化は進むと述べた。また、各システムでの帳票運用をカバーできること、帳票保存に対応できることなど、総合出力基盤のための七つの確認事項を例示した。
続いて、帳票が多様化していることを示したうえで、日本企業の海外進出などを例に挙げてグローバル化への対応も必要であることを指摘した。さらに、紙ベースであろうと電子帳票であろうと、帳票の保存が重要であることに変わりはないと主張。最後に、帳票システムを基盤化した場合の運用例をデモンストレーションし、講演を終えた。
[事例講演]
ライオンのシステム基盤改革への取り組み
~共通帳票基盤などのIT基盤と
基幹業務システムのリニューアル~
統合システム部 部長
宇都宮 真利 氏
ライオンは2010年から三年かけて、基幹系をメインにシステムをリニューアルした。同社の宇都宮真利氏はその目的、プロセス、成果などについて事例講演で率直に語った。
このプロジェクトは、業務の高度化支援、変化対応力の強化、システムの効率化という三つの目標を掲げて推進された。全社的な課題として取り組んだ結果、システム連携基盤を入れたことで、業務の高度化支援は十分な成果を上げ、変化対応力の強化の面でも、開発ツールや開発環境の整備により、土台をつくることができたという。システムの効率化については、仮想サーバーやクラウドサービスの活用などによってTCOは六割削減でき、共通帳票出力基盤を導入したことで、帳票の作成や修正も容易になるなどの成果を上げた。
最後に、情報システムのさらなる災害対策に、IT-BCPの高度化を挙げたうえで、バックアップデータセンターを設置するなどの具体案を示し、講演を締めくくった。
[特別講演(東京会場)]
三井物産の情報戦略
理事・IT推進部長
前川 一郎 氏
三井物産の前川一郎氏は、まず同社の歴史や理念などに触れてから、2008年以降、①情報戦略推進体制の整備、②三井物産ITランドスケープ(IT環境の在り姿)の策定と構築・推進、③効果的なベンダ政策の策定と推進、④計画的なIT人材育成、という四つの取り組みを進めてきたことを概説した。
まず、情報戦略推進体制の整備について、CIOを委員長とする情報戦略委員会を設置して、全社情報戦略、各部門情報戦略を企画し、実行する体制を整えてきたと解説した。
三井物産ITランドスケープ(IT環境の在り姿)の策定と構築・推進には、グローバルでのネットワークおよび認証基盤を統合しつつ、クラウドなども活用。IT・プロセス構築力によって総合商社としての機能を高め、新たなビジネス価値創造を支えているとした。
効果的なベンダ政策の策定と推進に関しては、国内外の大手ベンダと長期的な関係を構築し、包括的なアウトソーシングを実施していると説明。
最後に、計画的なIT人材育成について、IT推進部が、イントラネットでの情報発信、全社IT研修などの施策を実施していることなどを紹介し、講演を終えた。
[特別講演(大阪会場)]
積水化学のグローバルIT基盤構築について
経営管理部 情報システムグループ長
寺嶋 一郎 氏
積水化学工業の寺嶋一郎氏は、同社のIT戦略や国内IT基盤の整備について解説した後、2008年スタートの中期計画から、レポーティングネットワーク、情報共有、推奨ERPの展開の3点をポイントに、グローバルでのIT基盤整備を検討し始めたと説明した。同社は海外子会社の決算期を統一するとともに、グローバル電子社員証を発行するなどして、インフラを構築。レポーティングネットワークで各社の売上速報がわかるようにし、基幹システムについては一斉更新が困難なため、各国・地域の状況に応じて標準ERPへの更新を進めているとした。さらに、グローバルのITガバナンス体制については、グローバル適用を想定したITルールを制定し、今後は海外拠点のシステム監査も始める予定であるとし、講演を終えた。
[特別講演(名古屋会場)]
加速するグローバル事業展開に対応した
IT基盤再構築
情報システム部長
森永 聡 氏
M&Aで海外拠点を急増させている東海ゴム工業の森永聡氏は、IT基盤の再構築が喫緊の課題で、危機感を持って取り組んでいると強調。同社は盤石なIT基盤構築を目標に、IT部門の組織再編や中期IT戦略の策定を実施し、データセンターも建設した。国内についてはネットワーク構成を見直し、会社間で分断されていたネットワークを統合し高速化、冗長化、トラフィックの見える化を実現。グローバルネットワークも最適化を図り、高信頼性のIP-VPN網を基本に順次切り替え、海外データセンターの活用も開始した。さらに、海外拠点が増えていることに対応し、テレビおよびWEB会議システム、ファイル共有システムを導入。経営会議も刷新し、タブレット端末を用いたペーパーレス会議システムも取り入れたという。最後にIT基盤のグローバル人材育成への同社の取り組みを紹介し、講演を終えた。