「酷暑でも涼しいスーツ」は何がスゴイのか? ダーバン
1997年に発売して以来、多くのビジネスパーソンから愛用されてきたダーバンの夏向けスーツ「MONSOON」。文字どおり、高温多湿なアジア型気候の名を冠したスーツだが、なぜ20年の長きにわたって支持されてきたのか。その秘密を語ってくれたのが、レナウンでダーバンのユニットマネージャーとして活躍する志村裕之氏だ。
「構築的なシルエットや天然素材の美しい表情というデザイン的、感覚的な要素だけでなく、暑い夏をしのぐための科学的な機能性を高めてきたことが、『MONSOON』が長く支持されてきた要因だと考えています」
その具体的な特徴とは何か。まず大きな特徴の一つとされるのが、通常の約5倍という通気性を実現していることだ。夏向けスーツでは、言うまでもなく高い通気性を保持していることが第一条件。そこで通気性を生地、裏地ともに通常のスーツの約5倍に高めた。その結果、ネクタイをしていても涼しく過ごせる快適さを実現させたのだ。
しかも、商業水洗いに対応している。夏の汚れで一番目立つのは汗だが、実はドライクリーニングではなかなか汚れは落ちない。そこで、水洗いができ、それでいて型崩れしにくいスーツを生地から開発した。もちろん、こうした機能性とともに、ダーバンならではの「日本人の体型に合わせた」ジャパンメイドのものづくりも追求している。
「パターン(型紙)や縫製も含めて、ダーバンではすべて自社内で行っています。だからこそ、独自のデータを蓄積でき、日本人にしっかり合った着心地を実現することができるのです。『MONSOON』ではデータをもとに、日本人の体型に合うよう前肩設計になっているので、背中のラインがきれいに出やすいうえ、着心地もいい。多くのバイヤーの方からも日本人の体型にピッタリ合ったスーツだと評価されています」(志村氏)。
機能性を実証実験データで裏付け
こうした多くの特徴を持つ「MONSOON」だが、その開発がスタートしたのは1995年。以来、開発・改良を重ねる過程で多くの苦労を続けてきた。志村氏が続ける。
「そもそも高い通気性など機能性に優れたスーツづくりには多くの困難が待ち受けていました。たとえば、平織りの生地は網戸のような組織になっているのですが、チェックやストライプなどの柄を入れようとすると、どうしても生地の目が詰まって通気性を低減させてしまう。そこで糸を細くさせるなど多くの工夫を重ねてきたのです」
また、「夏に売れる=真に涼しいと感じるスーツ」をつくるために、合成繊維ではなく天然繊維にこだわったことも志村氏はポイントとして挙げる。
「スーツ素材はもともとウール素材が中心となっています。それはウールが天然繊維の中で、吸保湿性、熱の遮蔽性が最も高いからです。そこで開発当初から、天然繊維を念頭に大手繊維会社2社と通気性が高く、糸撚りが優れている強撚を使った生地をつくり出す努力を重ねてきたのです」