宴会活況!ビール市場に景気回復の兆し 次なる期待は、家庭向けビールの復活

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8月2日、ビール系飲料市場では、外食需要の改善や高級ビールの需要増に支えられ、ビールに回復の兆しが見え始めた。写真はキリンの「フローズン〈生〉」。6月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 2日 ロイター] - ビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)市場では、外食需要の改善や高級ビールの需要増に支えられ、ビールに回復の兆しが見え始めた。

景気回復の動きに加え、今年は猛暑という追い風も吹く。ただ、家庭で定着した安価な新ジャンルからビールへの回帰というドラスティックな動きにはつながっておらず、8年連続で過去最低を更新しているビール類総需要のプラス転換には、もう一歩力不足のようだ。

震災後の内食シフトに変化

「やや高価格帯の商品も受け入れられるようになっている。居酒屋の客単価も上がっていると聞いている」―――。アサヒグループホールディングス<5857.T>の奥田好秀取締役は、景気回復の影響がビール市場にも出ていると指摘する。

東日本大震災後、自宅で食事をする内食・中食化傾向が一気に強まった。ただ、今年に入り、この傾向にも変化がみられる。

日本フードサービス協会が発表した6月外食売上高では、客数、売上高ともに前年比3.6%増でぞれぞれ2カ月連続して増加した。休日が1日多かったことからファミリーレストランが好調だったほか、天候に恵まれたこともあり、パブ・ビアホールの売上高が同4.7%増と伸びた。

サッポロホールディングス<2501.T>の外食事業の既存店客数も、1―6月期で3%増加。震災の反動でプラスとなった昨年を上回って推移し、震災前に続いていた右肩下がりの傾向に変化が出ている。「宴会の回数や宴会に出席する客数も増加している」(広報担当者)という。

キリンホールディングス<2503.T>では、一番搾りに凍らせた泡を載せた「フローズン〈生〉」が外食店を中心に好評だったことから「1―6月は一番搾りの業務用の大樽が前年比2%増と好調」(広報担当者)だという。これを受けて、中間決算時点でビールの年間販売計画の上方修正に踏み切った。

一般的に、自宅での飲酒は安価な新ジャンル、外食ではビールが中心となる。大手5社が公表しているビール系飲料の課税出荷数量でも、新ジャンルの構成比は、30%台後半が続いており「新ジャンルが増えてビールが減るという構図がずっと続いてきたが、そうではなくなってた。ビールが安定してきているという傾向が出ている」(サッポロビールの野瀬裕之ブランド戦略部長)。

1―6月期の新ジャンルの構成比は37.5%。アサヒの「クリアアサヒプライムリッチ」やキリンの「澄みきり」など新商品が出たにもかかわらず、前年同期比2.1ポイントの上昇で、大きな変動とはなっていない。

ビールの販売数量は家庭用と業務用でほぼ半々で、外食の動向はビールの販売動向を大きく左右する要因となる。1―6月期のビール出荷が1.9%減となる中、同期間中の業務用ビールは0.9%減にとどまっている。

今年、アサヒは中元商戦にスーパードライのプレミアム版を投入した。6月末までに中元ギフトは前年比16%増となっており「ギフト市場で相当大きなシェアを取っている」(奥田取締役)という。

プレミアムビール「エビス」の拡販を今年の重点戦略としているサッポロでは、1―6月期にエビスの販売数量が1.5%増となり「順調に推移している」(上條努社長)。エビスの販売計画は前年比5.8%増の1000万ケースで据え置き、2010年以来の1000万ケース回復を狙う。

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