セミナーレポート

多様な社員が活きる組織のために

~ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)~

研修会I
〜多様性が組織を強くする〜
ダイバーシティ&インクルージョン
(多様性の受容と活用)とは

P&Gヒューマンリソーシス
アソシエイトディレクター
臼田 美樹

研修会では、P&Gヒューマンリソーシスアソシエイトディレクターの臼田美樹氏が、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の重要性を説明した。多様性には、性別、年齢などの“目に見える”違いのほかに、経験、価値観などの“目に見えない”違いがあると説明。しかし、組織に多様性があるだけでは、ビジネスの成果にはつながらず、それぞれの多様性を認め合い、組織に受け入れ、活かす「インクルージョン」が必要になると訴えた。組織に受け入れられている感じはあっても、多様性から生まれる新しい考えを認めない「同化」とインクルージョンは異なるとして、同化を強いることのないよう注意を促した。

P&Gでは、会社の最大の資産である「社員」の能力を最大限発揮させ、ビジネスを伸ばす経営戦略としてD&Iを位置づけることで、多様な消費者ニーズをつかみ、優れたイノベーションを生み出して、競争優位性を獲得してきた。

D&I推進には3つの要素が欠かせない

D&I推進には、三つのポイントがある。一つは、多様性を尊重する「企業文化」。経営陣自らD&Iの重要性を社員に伝えることで企業文化を醸成する。二つ目は、多様な働き方のための「制度」。P&Gは、月5日まで特別な理由がなくても勤務場所を自由に選択できる「ロケーション・フリー・デー」や、会社と在宅での勤務を合わせてフルタイムで働く「コンバインド・ワーク」など多様な制度を整備。社員それぞれの事情に応じて、最も生産性の高い働き方ができるように支える。そして三つ目、特に重要となるのが、多様性をビジネスに活かすための社員の「スキル」だ。臼田氏は「特に現場でD&Iを推進するカギとなる管理職が、多様な社員一人ひとりの能力を積極的に活かすスキルを身に付けることが重要」と語った。

研修会II
インクルージョンを感じる瞬間を生み出す
管理職のスキル

ダイバーシティ&インクルージョン
啓発プロジェクト トレーナー
P&G営業企画部長 ホームケア事業
担当
鈴木 崇平

続いて、ダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト・トレーナーの鈴木崇平氏が、日常的に多くの社員とかかわりを持ち、D&Iの要となる管理職向けのインクルージョン・スキル・トレーニングの内容を紹介した。

社員がインクルージョンを感じるのは「受け入れられる」「認められる」「活かされる」の三つがそろった瞬間と指摘。4、5人のグループに分かれた参加者同士で「自分を認め、受け入れ、活かしてくれた上司、そうではなかった上司」について、経験を語り合った。上司に認められ、やる気につながったという体験に対し、鈴木氏は「認めてくれない上司に対し、部下はベストを提供する気にならないものです」と話した。

その上で、上司として部下に対する際に留意すべき三つの点を提示した。一つは、双方向コミュニケーション。部下の考えや状況にかかわらず、一方的に決まったやり方を求めるのではなく、双方向のやり取りをし、一人ひとりに合わせて、部下の能力を伸ばす手助けをする「コーチング」を勧めた。

二つ目は、人は誰でも無意識の偏見や思い込みを持っていると理解すること。鈴木氏は、時短・在宅勤務をはじめた部下に「介護および育児と仕事の両立が大変だろう」と配慮して、仕事量をやや減らした結果、柔軟な働き方制度を利用して活躍しようと意気込んでいた部下のモチベーションを下げてしまった自らの失敗に言及。「善意のつもりでも、勝手な思い込みが、相手の可能性を排除してしまうこともあります」と述べた。

三つ目は、自分の言動をつねに意識すること。上司の言動は、部下のやる気、成果に敏感に影響するとして、特に、昇進など「達成」の時、異動など「変化」の時、日々のやり取りやメールなど「交流」の時への注意を促した。

その後、参加者は「インクルージョンされていると感じた瞬間」をテーマにグループでディスカッション。コミュニケーションを意識することで部下からの評価が上がった経験、上司から言われてやる気が出た/なくした言葉などを語り合ったほか、あらためてダイバーシティ&インクルージョンの目的を組織内で共有する重要性などについて率直な意見交換がなされた。こうした議論を受け、鈴木氏は上司の何気ない一言でも部下は忘れられない言葉になるといったことに触れながら、管理職として、部下を理解して話しやすい雰囲気をつくり、グループや部下への期待値を明らかにし、自身がロールモデルになること――を求めた。

最後は質疑応答。忙し過ぎてD&Iまで手が回らないという管理職にいかにその重要性を伝えるかという質問に、臼田氏は「少し立ち止まって自身の言動を考えることは、忙しくてできないことではない」と回答。「多様性を受け止められない会社には存続への壁があると考える」と、取り組みを勧めた。