再生力で自力浮上!
プロに聞く企業活性のカギ
中小企業金融円滑化法期限切れを迎えて
中小企業は協業化して活路を見出せる
―― 中小企業が事業基盤を強化するためにはどのようにすればよいでしょうか。
許斐 限定した大企業に依存せず、中小企業側も数多くの取引先を持つような事業構造が望ましいと考えます。実際、世界シェアを握っている日本の中小企業も数多くあり、このような国はほかにはありません。
―― 世界シェアを取るような競争力がない中小企業はどのようにすればよいのでしょうか。
許斐 私は会社分割やM&Aを含めた複数企業間の組織再編によって事業の再構成をすることを勧めています。組織再編を伴わないまでも企業が連携し、提供する商品価値を高める協業化をぜひ提言したい。たとえば製造業の下請け企業同士が協力しそれぞれの技術や部品を組み合わせることによって、独自の商品をつくるといったことです。これを「システム化商品」と呼んでいます。従来よりも価値の高いシステム化商品を製作することで三次・四次請けだった企業が二次・元請け、さらには直接消費者へ商品を届けられる立場に変化することが可能になると期待しています。
―― 製造業以外においても同様の考え方ができますか。
許斐 個社ではなく関係者が協力し合った共通の戦略を持つことで、再生を遂げた事例は多くあります。たとえばある商店街では近隣に大型店舗が出店して商店街のどの店も潰れてしまう危機に瀕し、再開発事業を通じた商店街全体の再生を実現させました。個別の利害を主張していては外的な大きな変化に対応できません。成功した事例で共通して言えることは、自分たちでは対抗できないような外的な経済環境の変化に対し、企業の枠を超えて団結できたことです。
―― 外的な環境変化がプラスに働くこともあるということでしょうか。
許斐 現在、すべてのものがグローバル化して競争環境は非常に厳しい。ただ逆手に取れば、協業化する相手もグローバルに選択でき、自社の顧客もグローバルに存在するようになったと言えます。中小企業は今こそ事業基盤を再構成し、強化するチャンスだと思います。
『ケースブック 事業再生』
中央経済社
豊富な事例から、どのように事業の再生に取り組むべきか、経営危機から脱することができるかなど、実践的な事業再生のノウハウを伝授する