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新たな産業集積モデルの構築を

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オースティンモデルの実現を

PCメーカーのデル創業の地として知られるオースティンは、1960年代半ばから80年代半ばまでの約20年間に、人口が14万人から76万人に急増した。テキサス大学オースティン校のコズメツキー博士が地元の産官と協力し、IBMやモトローラなどの企業や、コンピュータ業界の共同研究機関などを誘致した結果、その後も人や企業、資金が自然と集まるようになったからであった。誘致型の企業集積からスタートし、内発型の発展へと転換し、地域経済循環が活発化した好例である。

私はかねてからオースティンモデルを日本でも実現できないかと考えてきた。たとえば神奈川県のある都市では、自動車工場跡地に家電量販大手の物流センターが稼働しているが、この企業はここに情報センターも設けている。この企業はオムニチャネル事業を実践しているが、BtoCのビジネスでは取り扱う情報のデータ量がけた違いに大きくなるためだ。

また、この地域には、医療機器や医薬品、衛生用品などをつくっている外資系のメーカーも立地しており、ナノ医療イノベーションセンターも立地した。こうした頭脳の拠点ができると、さまざまな産業に波及していく。実際、私立大学の大学院や国立大学がここに拠点をつくることもすでに発表されており、ロボティクスのベンチャー企業も出てくる予定だ。そうなると関連する研究機関などが出てくることも予想されるし、海外の研究者も集まるようになるだろう。

波及効果の大きい産業の誘致の代表格は自動車産業だ。以前、愛知県内のある都市に大手自動車メーカーが臨海部としては初めての工場をつくったときには、同市の所得が大きく増えた。同社関連のメーカーが岩手県内に立地したときも東北経済に大きな波及効果を及ぼした。

ただ、気をつけないといけないのは、今後の大きな産業の構造変化だ。たとえばガソリン車の場合、完成車1台に3万点くらいの部品が使われるが、電気自動車になると部品点数は10分の1ほどに減る可能性がある。そうなると、自動車メーカーの製造拠点を誘致しても、ガソリン車のときほどには多くの部品メーカーなどが集積しないかもしれない。自動車メーカー各社は今後徐々に電気自動車や燃料電池車に生産の主力を移行させていくであろうから、この傾向は次第に強まっていくに違いない。一方、ハイブリッド車や電気自動車が増えるに伴い、ガソリンの需要が減少していくことも予想されている。今後、石油精製などの製造分野でも徐々に変化が現れる可能性がある。

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