相続特集

後悔しない今から考える相続

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特に注意したいのは被相続人(親など)が会社を経営していて、子どもが相続人になる場合です。オーナー経営者として株式の大部分を所有している場合、たいした価値がないと思っていても、会社の資産や業績等に応じて評価額が高くなりがちです。中小企業でも数億円規模になるケースも珍しくありません。相続財産が自社株ぐらいしかない場合は、納税資金を銀行などから借入せざるを得なくなります。会社を引き継ぐ場合にも大きな影響を及ぼすのです。

―相続は“争続”であるとも言われます。家族や親族間のトラブルも多いようです。どのような事例が増えているのでしょうか。

八ツ尾 相続でトラブルになりやすいのは、兄弟など相続人の間です。特に不動産の相続はもめ事になりやすいですね。

預貯金であれば容易に分割できますが、土地や建物の場合は簡単ではありません。親と同居していた兄弟が、親が亡くなった後も出ていかないため、売るに売れないという事例もよくあります。それぞれが結婚していて配偶者がいると、さらにまとまりにくい傾向があります。

争いにならないためには、事前に被相続人(親など)が、自分が亡くなった後、財産をどうしてほしいかといった「思い」を伝えておくことが大切です。

たとえば正月に実家に兄弟が集まったときなどに「自宅は長男に、その分の現金を妹に」などと話しておけば、後々もめ事になりにくいでしょう。

―「思い」を確実にするために、公正証書の遺言書にしておくのはどうでしょうか。

八ツ尾 確かに遺志は伝わるでしょうが、亡くなってから初めて「全財産を三女に譲る」といった遺言書が出てきた場合、亡くなった方の配偶者やほかの兄弟はどう思うでしょうか。

実際には、このような遺言は遺留分を侵害するため、ほかの兄弟が「遺留分減殺請求」を行使することになり、裁判で争うことになります。それでなく、たとえ3人兄弟に「3分の1ずつ」と記載されていたとしても納得のいかない人もいるでしょう。

大切なのは遺言書を書くか書かないかではなく、文字どおり、被相続人が相続人に対してしっかりと自分の気持ちを伝えることです。

トラブルを防ぐためにはコミュニケーションが大切

―高齢化社会の到来により、老老介護などの問題も生じています。家族の形態が多様化している中で注意すべきポイントはありますか。

八ツ尾 高齢の親と子の2人暮らしの場合、お子さんのほうが先に亡くなってしまうこともあります。そのようなときは、高齢の親御さんがお子さんの財産を相続することになりますが、もしもその親御さんが亡くなったらどうするのか、事前に検討しておく必要があります。二次相続などの問題も同様です。私が携わった案件ですが、一人暮らしのお年寄りが亡くなって相続をお手伝いしたことがあります。調べてみると現金が大幅に足りない。後で、この方が詐欺被害に遭って高額な商品を購入していたことがわかりました。

このような事件を防ぐために、安否確認の意味でも、定期的に連絡をする習慣が大切です。また、まだ元気だからと先送りせず、日ごろからコミュニケーションを取り、親子や兄弟間で「もしものとき」を話し合っておくのがいいでしょう。
 

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